そしてここで2時間。

 一息ついて見るとビルの1階〜5階ぐらいまでジャンルわけしながら営業しているらしい。プリクラフロアは論外として、シューティングがないか調べたが特に面白そうなものは見つからない。今日は探し物には向かない日だな…と思いながら、UFOキャッチャーが集められた1階に降りた。
 結果的にそこで持ち時間全てを食い潰すことになった。後お金もね。
 たった1個、小さいフィギュアを取ろうとコインを入れたのが悪夢の始まりだった。
 たまたま、先にプレイした人が後少しというところで金が尽き撤退したらしい、クレーンでひと押しするだけで取れそうなまどマギのフィギュア。取れそうなという予感はすっかり裏切られ1,000円近く投資してやっとゲット。ところが、回りを見渡せば登場キャラ全員分のフィギュアが揃っている。

 どうせ1つ取ったのなら他のも揃えては…。
 修行が足りない自分の内部の黒い何者かが囁きかける。止めに入る者など誰もいない。確かに6種類全部を揃えることはできた。費用対効果で言えば1個1,000円という信じられない戦費を払って…。
 ところが、今まで殆どやったことのないUFOキャッチャーで曲がりなりにも結果を出せたという馬鹿げた自身がさらなる悪夢を招き寄せる。
 …あー、俺妹のも揃えちゃっていいんじゃね?。イカ娘もあるっぽいけど?。
 昔のように単にクレーンでプライズを掴み上げるタイプのものはなく、全て1,000円近く消費しないと取れるチャンスは回ってこない仕掛けばかり。
 時計を見ると何ともう自由時間の半分が過ぎていた。軍資金も1万円札を崩したところだ。Fate/zeroシリーズも2つ落とし、ちょっと調子に乗り過ぎている。
 また来てやればいいじゃないか。今度は1泊2日で両日とも秋葉原に来ればいい。
 そう自分に言い聞かせて、そっとその台を離れた先に、少し大きめのセイバーが立っていた。

 30秒後には両替済みの500円玉を10枚ほども握りしめた自分が新たな台にしがみついていた…。
 このセイバー、仕掛けは2種類あって、一つは台中央にあるスーパーボール状のストッパーに、ゴム紐でプライズを吊り下げたプラ板が引っ掛けられているもの。これはアームでスーパーボールからプラ板を引き剥がしてやればプライズが落ちるのだが、スーパーボールのμ値が大き過ぎてか弱いアームではとても勝てないことを、3,000円以上を投資してようやく理解する。ひどい。
 もう一つの仕掛けはもっと簡単で、大きな方形の穴が開いたステージに500gほどの錘板が落ちるか落ちないか微妙な具合に置かれており、その下にプライズが置かれている。アームで一旦引っ掛けて持ち上げてドスンと落とせば、自重による勢いでプライズを巻き込んで落下する…はずである。こちらは何と自分が隣でとんでもない浪費をしているさなか、ふらりとやってきた他の客がたった1コインで成功。こんな簡単なら最初からこっちでやればよかったよ、とすぐに自分も真似してやってみたが全く落ちる気配がない。
 錘板の落下の際に、簡単には下に落ちないようアームにもステージにもちゃんと小細工がしてあるのだった。がっかり。だが現実に取った客はいたのだから、どうにかして成功できるはず…。
 結果、およそ2,000円の投資でゲット成功。