さ、撮影会…。

 昨夜は義妹宅に宿泊した。近隣に住む親族がハウスキーピングのため出入りすることになっていて、泊めさせてもらう代わりに掃除などしていく決まりである。義妹夫婦は7月に一度帰国してその後は義弟が単身赴任するかこれまでどおり家族で海外勤務を続けるか考えることになっているそうなので、こうしてちょっとした出先宿泊所のように使わせてもらえるのも最後かもしれない。
 さて、起床したのは11時過ぎだった。N氏は今日は仕事だというので、もし俺が今夜まだここにいたら飲みに行かないかと誘われた。残念ながら俺が日曜は仕事のため、またの機会を探すことに。
 先日行き違ったT氏を思い出して連絡してみると、今週からしばらく福岡に出張だと言う。
 昨夜はとんでもない無駄遣いをしてしまって財布は空になっている。思い出すだけでも愕然とするが、おかげで今日の行動も大きく縛られてしまっている。
 さて、どうしようかな。
 庭を見ると少し曇り出しているが、まだ雨は降っていない。普段なら庭木や花壇(隣の家の奥さんが手入れをしてくれているのだ)の写真を撮って行くところだが、曇りだとあまり見栄えもしないように思われる。今からどこかへ出かけるにしても時刻が遅すぎる。
 目線を落とすと、手元には昨夜のUFOキャッチャーでの散財の結果が転がっていた。自宅アパートに持って帰ることは難しいし、そのままブリットのラゲージルームに押し込んでおくのがおちだろう。というか開封すらしないような気がする。実際これまで入手したプライズフィギュアは、全て筐体内にぶら下げていたビニールひもや輪ゴムすら外さないままコンテナに納めてある。
 !そうだ、どうせすることないんだからプライズフィギュアの撮影でもやってみるか。
 義妹宅は妻一族の例に漏れず徹底的に片付けされており、静物を置いても写り込みが邪魔になるようなものがほとんどない。おあつらえ向きに広い庭に面した客間にはちょうどいい高さのテーブルが置いてあって、ここに何かシートを敷けば作業しやすそうだ。
 というわけで、ブリットから撮影機材と死蔵されていたプライズ群を降ろし、ヲタグッズの一人撮影会が始まった…。
 収納に使っていた大型コンテナは全面乳白色だったのでライトボックス代わりにならないかといろいろやってみたが、プラスチック成型が波打っていて反射が強く使い物にならなかった。昔広報誌の小物撮影で大きな段ボールの内側にコピー用紙を貼って即席のライトボックスにしたことがあったが、やはり手作りであってもそれ用に作っていないと話にならない。そのコンテナはバックスクリーンを吊る台にした。スクリーンは、オーストラリア土産のテーブルクロスがあったのでそれを使う。
 使うカメラは6DとEF24-70mmF4Lのマクロモードだが、今まで気にしながらまぁ次に困った時に考えようと先送りにしてきた問題が露呈した。持っている三脚はコンデジや軽量ビデオカメラ向けの格安三脚であるベルボンU6600で、こいつは足の部分だけはアルミだが雲台他の部分は全てプラスチック製のため強度がなく一眼レフ機で荷重をかけるとすぐにたわんでしまう。それでも荷重を三脚の垂直線の真上から掛ける通常の水平位置なら我慢できるが、カメラボディを縦位置にすると雲台が過大に曲がって垂直どころの話ではない。雲台まで全金属製のものはドイツ旅行の際に購入した一脚だけだ。まぁ一脚を主にして、重いフラッシュ側をもう方一方で支えてやればいいか…。
 フラッシュはKissDの頃から愛用の580EX2をマスタモードに、これまた6Dのために購入していた280EXをスレーブにして申し訳程度ながら多灯撮影を実現。
 さぁ、俺みたいな素人にはもったいないような撮影準備ができた。これで撮影するのがアニメのフィギュアと言うところが涙を誘うが…。
 ブリットに保管していたプライズは全部で20種類あり、そのうち撮影に使えそうな一般的なサイズのフィギュアは7つ。けいおんとある科学の超電磁砲、後はFate化物語など観たことはないが名前は聞いたことがあるレベル。ひとつずつ開梱して組み立ててみるが、原価が数百円というものの割には意外と細かく出来ていて感心する。さすがに2chまとめサイトの広告によくあるような1体数千円の本格的なフィギュアに比べれば見劣りするのだが(そして、俺はこれらを落下させるために同等の金額を投じてしまったことがある…)
 どう撮るのがいいのだろう。とりあえず適当なフィギュアをスクリーン前に置いて、280EXを片手に横から上からと位置を変えて試し撮りしてみた。夜景用に買ったレリーズケーブルは便利だが、中国製の互換品なのでコネクタが甘く自重でボディから脱落してしまう。今まで夜間撮影で急にレリーズケーブルが使えなくなり赤外線リモコンで代用したことが何度もあったのだが、ようやく原因が分かった。
 おお!?ひたすらレリーズボタンを押していると、何枚かに1枚くらいはある程度見栄えがするのが混じっている。

 あれ?ちょっと、これ意外と楽しくない?


 
 外からの太陽光の色合いがいい具合に出る場合もあったのだが、邪魔だなと感じるようになったところで雨が降り出した。けいおんのフィギュアは屋外で撮影したら何だか雰囲気が出そうに思ったが、快晴でないと難しいか…。それなら全部室内光源でやった方がいいように感じ、庭との境のカーテンを全部閉め切って撮影続行。
 調子に乗ってレリーズしまくってコマ数が500を超えたところで、気がつけば夕方16時である。室内に何体も転がったフィギュアを見て我に返った自分。
 ああ、俺、一体何やってんだろう…。
 
 ハードオフなどで1体100円ででも売れればいいか、とフィギュアは全て元通りに梱包し直して、残ったのは6GBほどの無価値なデータであった。
 まともな自由雲台と三脚がほしい…。