閉店。

 化学療法室を出て、診察を済ませたらもう15時過ぎになっていた。
 外は強い雨。患者の車もまばらになった病院の立体駐車場の中で、ブリットのフロントガラスにRain-Xを塗っておいた。
 大して空腹ではなかったが、最寄りのモスバーガーに立ち寄りハンバーガーとジンジャーエールを頼んだ。薬の副作用で車の運転が難しくなる場合があるから、すぐに長距離を走らず院内か近くで様子を見るようにと言われているが、これは単純に昔からの習慣だ。
 食べ終えてから、郊外にあるゲームセンターに向かった。
 この田舎では珍しくショッピングモールの片隅だとかではない純粋なゲームセンターだ。置いてある筐体は多くはないしあまり新しいものではないが、戦場の絆やクレーンゲームもあって中々楽しめるところ、なのだが…。
 着いてみると入り口の階段にはチェーンが張られており、小さな看板が立っていた。
 「当店は6/13をもって閉店いたしました」
 なんてこと…。
 
 しばらくブリットの中で呆然としていたが、これは薬の副作用が原因ではない。
 他にこの辺にゲームセンターはないのか。積んであるVAIOでざっと検索してみると全国のゲームセンターの情報をまとめたWIKIが見つかった。この周辺でもかなりの数の店舗情報が記載されているのだが、ほとんどは既に閉店しているか喫茶店の片隅に置いたテーブルゲームも掲載対象にしているようで、まともな物は数えるほどしかない。
 降りしきる雨の中、設置台数だけは多いような情報があったある店舗へブリットを走らせてみた。着くとそこは通行量も少ない県道脇の昭和の時代の空気をそのまま残したドライブインだった。恐る恐るドアを開けると、スロットやコインゲームがわずかに置かれたコンクリート打ちっぱなしのカビ臭い店内に、近所の住人と思しき高齢男性が二人たばこを燻らせていた。
 
 少し離れた国道脇のショッピングモールにボウリング場がある。そこにもゲームセンターが併設されているとの情報もあったので行ってみた。残念ながら大した品揃えではなかったがクレーンゲームも何台か設置されていた。ただしほとんどの台はいわゆる確率機…いくら投入したかによってで、本当に景品が取れるような操作ができるかどうかが決まってくるという、パチスロやら最近流行りのガチャゲーと大して変わらない悪どい代物だった。
 
 ゲームセンターはそもそも若年層向けの施設だから、その世代が減ってくるこれからの時代経営的にはもっと厳しくなってくるのだろう。
 そのうち、100円玉を持って片道2時間、県都まで走ることになるのだろうか。県都でもゲームセンターはどんどんなくなっているが…。