雪道を走り。

 床屋に行きたいと思っていた。
 N氏が東京旅行計画の仕切り直しをしたいと表明していたのでその打ち合わせついでに行こうと企図したが、いつもどおり正午頃までゆっくり睡眠をとっており、起床して出発準備を整えたのは15時頃だった。
 今日から非常に大型の寒気が南下してくるため日本全国で相当量の降雪が予想されている。それでも来るのかと他ならぬN氏から正気を疑うメールが届く。
 自動車道を走るが既に積雪が多く、そこら中で交通事故処理が行われている。我がブリットはFRであり本来なら雪道は苦手であるが、年末に故障したはずのVSC・TRCはここ数日何ら問題なく動作しており今日も車体のブレなど強力に補正してくれるので走行に不安はない。
 とは言え他の車の速度が遅いので、いつもなら片道2時間未満で到着できるところ3時間掛かり、N氏との打ち合わせどころか床屋へ閉店前に滑り込めるかギリギリの時刻になってしまった。
 店の灯りに安心して入店したが、やはり俺が今日の最後の客となった。マスターの孫娘二人が明日からスキーに行くというので店内で準備を進めている。どれくらいの腕なのか尋ねると、指導員から強化合宿に誘われるくらいだと言う。そういえば俺がこの店に通うようになってから生まれたこの子達も、もう小学校高学年か…。
 しばらく話し込んで、店を出たのは20時過ぎだった。
 
 今からN氏宅に押しかけても迷惑な時刻だった。N氏とは日を改める事にする。F氏からも近くまで来ているとの連絡が入ったが、今から合流するとどちらも帰りが心配なのでこちらもまたにした。
 結局いつも通うHARD-OFFへ。先週ここでSCSI接続のフィルムスキャナを購入したところで、新たにめぼしい物は見付けられなかった。
 さて、朝から何も食べていないし今から帰宅すると到着時刻は翌日になってしまうので、深夜でも入れる店で夜食を取って行こうと考えた。新しい店を見付けたり探したりする努力も意欲もない男であり、いつも行くスシローでいいか…とブリットを走らせていると、そのスシローの近所に大きめのゲームセンターがあるのを見付けてしまった。
 よく見るとここもよく立ち寄るまた別のHARD-OFFのすぐ近くだった。イオンの敷地内で反対側に店舗があったので気が付かなかったのだろう。
 ふらっと入ってみると、素晴らしいことにUFOキャッチャーメインで営業していて台の数が多く、また一見して難易度が低めの設定ばかりのようだ。それに天候も悪く遅い時刻なので店内にいる客はもう完全にヲタク臭をまとった大学生か、そこから一回り二回り年輪を重ねた中年男性がちらほら見受けられるだけ。
 ああ、何て気兼ねなく遊べる状況なんだろうか…。

 年甲斐もなくとはまさにこのことだろう。
 アパートの中には中身を明らかにできないダンボール箱やコンテナが既に5〜6箱積み上がっている。
 撮影対象にするにしても撮影できる機会がない。
 どうする、俺。