誕生日に。
コロナ禍で想定外にお盆休みが長くなっているという向きも多いが、俺はカレンダー通りの勤務予定だった。しかし急ぎで依頼が来ていた調査を思いの外早く仕上げることができたので、山の日の３連休に追加で１日夏季休暇を取得することにした。
普通にお盆休み中のN氏からどこか遠出するのかとメールが来ていた。彼からこういう連絡があれば、大抵はどこかへ出かけようという誘いである。
形を変えて外出自粛が求められている状況ではあるが、行き先がないわけでもない。またいろいろとあって気晴らしをしたいのだろうと思い、逆にどこへ出かけるつもりなのかと聞き返すと、コロナ禍で遠出はすべきでないと「常識的」な返事があった。
ああそうだ。ならば、俺がどこへ行こうが、君には関係がないと思うが、どうかね。
土日は寝て過ごし、月曜にようやく外出。
義妹宅に立ち寄って出迎えに飛び出してきたトイプードルを抱きかかえたところ、「お誕生日おめでとう！」と姪がお祝いしてくれた。
ああ、俺、連休中に誕生日だったんだ。
義弟は庭に目隠しのウッドフェンス取付工事を進めていた。聞けば日々続く炎天下に庭で日光浴をしていると、白人男性にとって当たり前のタトゥーを通りかかる近隣住民が目撃して怯えるのが気に入らないという。日本での入れ墨文化の実態を思えば周囲の人の反応も止む無しで、逆になぜ入れ墨をしたがるのかが分からない。
工事を手伝おうと申し出たが、コンクリートドリルが一台しかないとして断られた。
夜に誕生日パーティをしようと言われ、気恥ずかしさに早々に退散することにした。
先日職場で不意の休みの過ごし方が話題になった際に、大型の温泉施設でぼんやりするのもいいと言ったところ、Hさんから極楽湯で鬼滅の刃コラボが開催中なのでぜひ行くべきと勧められていた。彼女は布教活動に熱心だ。
実際のところ今までに何度も利用した施設なのであまり目新しさはないが試しに行ってみる。
とりあえず汗だくだったので入浴を済ませ、持参した新しい服に着替えて館内を散策。
コラボ内容は店内レストランの限定メニューとグッズの販売、オリジナルの館内放送だった。限定メニューを注文すると18種類のイラストコースターがランダムでもらえる。Hさんは獲得した信者間でこのコースターをトレードして全種類コンプリートしたいのだ。
限定メニューはこの手のコラボでは当然だが高い。高過ぎる。最も食べごたえのありそうな善逸のカレーで一皿1500円。ボリ過ぎだろう。カレーのシャルマで1500円払えばターリーセットが食える…などと言っていたらコラボイベントは楽しめない。
とりあえずカレーと、他に最も単価の安いソフトドリンクとケーキで３枚のコースターを入手した。味？聞くな。
コロナのせいか平日だからか、館内は混雑せず快適だった。レストランも新しい客が入ってくる様子もなく、ボックス席を数時間独り占めできた。
FlightRader24で小松空港の出発・到着情報を見つつ、午後遅くに小松空港へ向かった。航空便利用者が激減したため来月から定期航路が閉鎖されるという噂もあるし、今しか撮影できない機体もあるかもしれない。
ランウェイ24エンドで飛来する機体を探していたが運行予定が欠航になったものも多い。夕暮れとはいえまだまだ暑く、空自機が飛ばない休日では他に撮影者の姿もほとんどなかった。
ANA機とIBEX機をそれぞれ１機ずつ撮影して本日は撤退。
帰路、小松市内のアルプラザにトイレを借りに入ったついでに店内を見て回った。入店するのは十数年ぶり。閉店間際のせいもあるが店内の寂れ具合が目立った。同じ市内に規模が大きなイオンモールができたので客はかなり減っただろう。
小さいカメラ店を見つけたが今日の営業は終了した後だった。手つかずの各社の古い銀塩カメラが当時の純正オプションと共に展示されているガラスケースを眺めていると、EOS3の新品を見つけた。本体だけで50,000円。
これが５年前ならもしかすると買ってしまっていたかもしれないが、EOS55でフィルムが自分の手に余ることは十分学んだ。
館内にロッテリアがあった。
ロッテリア！。あまりの懐かしさに入店して絶品ベーコンチーズバーガーとコーヒーをオーダ。学生の頃に友達と一度だけ行ったのが最後だったのではないか。当時はモスバーガーにもマックにも及ばない中途半端な店だと思っていたのだが、今食べてみると流石にマックとは同等か、少しマシに感じた。
明日に備えて片町のホテルに予約を入れ、湯涌温泉に足を伸ばす。例年のぼんぼり祭りはコロナ禍でイベント中止となったが、ぼんぼりの点灯だけは行われていた。
温泉街を散策するが、宿の駐車場はどこもほとんど満車だった。
ホテルに荷物を置いてから、夕食がてら片町を散策した。酔客の気配は少ない。
店の呼び込み達も半ば諦め顔に見えた。
