繁華街にて。

 最近呑みに出ることがめっきり減った。ひとえにZ君が自粛中だからだが。
 仕事で成果が出ないまま春が近付き、周りも俺もイライラすることが増えているので発散しようと、N氏を誘って県都の歓楽街で呑み歩き。
 あいにくの曇り空、待ち合わせ場所のスクランブル交差点は少し肌寒かった。
 コロナ禍で外国人観光客が少ない街だが目当ての店は客で満杯だった。客引きを避けつつ、N氏が同僚達と利用するという居酒屋チェーンに入る。
 カウンターで適当に料理を頼み、俺はビール、N氏はレモンサワーで乾杯。
 近況を話すが、N氏は生活の変化にも慣れて両親との同居をうまくいなしながら過ごせているようだった。
 どちらかと言えば彼の方が様々なプレッシャーに耐えながら生きており、俺の方のどうでもよい話など聞かせる気もなくなる。
 それに俺の下らぬ愚痴よりN氏の明るい話題の方が聞いていて楽しいに決まっているではないか。
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 何杯かジョッキを空け少し酔いが回り、お互いの声も段々と大きくなってきた頃。
 マナーモードにしていたBBKEY2に着信があった。Hさんからだ。
 彼女は日曜に仕事があるものの今日は県都で映画を観ると言っていた気がしたが。
 話を聞くと、交通事故を起こしてしまったという報告だった。
 「えっ、あなたや相手は無事か?」
 「私も相手も大丈夫でした」
 交通事故の状況によっては上司や総務に報告する必要が出てくる。しかし、誰かの財産を損壊させたりけが人を出すなど警察が捜査するような事態でなければ、黙っていれば分からない。それでも正直に知らせてきたのだ。
 今回は別に考査に影響するような事態ではないようなので、俺からまず総務に報告の要否を聞くことにした。
 「Gungunmeteoさん確か今夜は呑み会ですよね!。私の不幸で美味しいお酒が飲めますよね!」
 「フハハ!そうだね早速乾杯させてもらおう!」
 「マジ最低ですよ全く!」
 そこで電話は切れた。

 2時間程でその店を出たが、料理は全く物足りなかった。元々行きたかったのは小さな串カツ屋だったのだが、N氏が見つけていた別の串カツ屋に入り直す。
 メニューにあった「抹茶サワー」を頼んだが、よくある甘い抹茶フレーバーを想像していた俺をその抹茶サワーは容赦ない苦味で叩きのめしてくれた。
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 タクシーで帰宅するN氏を見送り、俺は予約してあったビジネスホテルに転がり込み、既に始まっていた頭痛のせいでテレビも見ずにベッドに潜って寝てしまった。