よそでお呼ばれ。

 終業後の夜、Oさんと二人でサービス残業している際にIS11Tの着信音がなった。
 I君から飲んでいるので出てきてほしいとの連絡で、面子を尋ねるとI君の係のA先輩、S君、Y君、Tさん…つまり係員全員だった。
 仕事が進まないOさんの様子を見ながら自分の仕事をしていたが、ボスからの指導に従ってみせているのに俺と2人になると愚痴をこぼしているOさんに少し苛立ちを感じていた俺は、A先輩からの度重なる催促を誘いを口実にしてオフィスを出た。
 
 約束の店までの路上で呼び止められた。前にしばらく一緒に仕事をしていたMさんとその職場の一同だった。一緒に来るよう誘われたが先約があると断った。
 その一団の中に知らない女性がいて、Mさんに聞くと最近入った新しい人だという。初対面の挨拶だけして先を急ぐ。
 
 店に入ると小上がりにA先輩の顔が見えた。15年前に初めて会ってから全く変わらず若くて綺麗なままだが、何となく貫禄が出てきたようにも見える。隣の席はこちらもA先輩といつもつるんでいたM先輩と職場の一同がいた。たまたま鉢合わせしたとのこと。
 A先輩以下の今回の集まりはどうやらI君の仕事上のトラブルを解決した打ち上げだったようだが、年齢も経験も上になるS君に対してI君の態度が横柄なことが気になった。
 業務分担の見直しでI君が担当する広報業務をS君にも担当させようとしているようで、席上もこの仕事は適性があるから、あの作業は得意だからと話を振っているがS君がのらりくらりとかわしている。それはまぁ…上司であるA先輩からの正式な指示ならともかく、後輩から仕事を突き付けられて素直に頷けるほど出来た人間はそうそういない。もちろんS君は業務を全く問題なくこなせるし、今担当を代わるなら他に適任は思い付かないが。
 自信家のI君はこの辺りの空気が見えないか、見えても無視しているのかも知れない。
 
 病院の広報委員会に今年から参画することになったと話すと、A先輩は病院がアピールしたいものをもっと広報へ持ってこいと言う。地域住民の生活改善に関与したいと言われている某DrにCATV枠を提供すればと提案したが、どうも以前試したところDrの意向がわがまますぎてうまく行かなかったとのことで乗り気になってもらえなかった。