仮想世界で。

 今度の週末、県内の他医療機関との親睦スポーツ大会が開催される。
 スポーツに何ら寄与する能力がない俺は参加を遠慮させてもらうつもりであったが、気がつけば院内の影の事務局長であるSさんにパシリの一人として裏方に組み込まれていた。何をすればいいかと尋ねると、アンタにさせる力仕事はないが、各医療機関の広報誌に載せるための記録写真の撮影を任せるという。
 俺のカメラ一式貸してやるから代わりに撮影やってくれとI君に言うと「県外から何人か友達が遊びに来るので、ちょっと行けないんです」と答えた。
 隣で聞いているTさんが「また私用を優先して…」とでも言いたげな表情を一瞬見せる。
 俺はふと思い当たることがあり「もしかして、ニコ動の自分のチャンネルのリスナーさん呼んだのか?」と聞くと「ビンゴです!」。ゲストと一緒に数夜に渡って特番を流すらしい。
 この男、リアルではコミュ障コミュ障と散々自虐ネタを振り回すが、仮想世界ではかなりの有名人である。