レセプト残業…ではないが。

 昨日・今日と休日出勤。
 今の病院では昔に比べてレセプト残業は驚異的に短縮されており、一週間午前様のようなことはなくなっている。自分と入れ違いに医事課に入った前次長が業務の最適化を進めたお陰だ。
 それまでの医事課では水準より低い査定率を誇りにしており、それを維持するための手間は惜しんでいなかった。それは間違ってはいないのだが、その手間をコスト換算した場合に、果たして高精度の保険請求に見合う利益が出ているのかどうか考えた管理職はいなかった。もしかするといたのかも知れないが、皆医事課の生え抜きばかりであったし、日々の成果を追求する正の行動意欲に対してその意義を問うような真似は医事課の中ではできなかったかも知れない。
 前次長は外部から送り込まれた故にその疑問を口にし、さらには業務に大ナタを振るうことができた。もっと言えば人員整理が最終目標だったと言えるかもしれない。
 結果、やはり査定率は大幅に上がり、レセプト委員会では医局長が毎月その理由を尋ね直すような査定・返戻事例に事欠かなくなってしまったが、レセプトに関してみれば業務量は減った。自分の当時よりも電子化がさらに進んで請求情報が不可視化されてしまい、人間が目視点検できる余地が極端に減ったことも影響しているが…。
 もうひとつ昔との違いは組織再編で医事課から医事係へ変わったことだ。かつて30名近くの職員を擁する大所帯だった医事課だが、窓口・病棟業務の大部分を派遣業者に委託した結果、正規職員はわずか6名にまで縮小されてしまい「課」の看板を掲げるにはそぐわなくなったことと、事務局隷下の業務組織が増えたことからそれらと合わせて「係」に再編された。
 未だに他部門からは医事課と呼ばれ、我々も何気なく医事課と名乗ってしまうのだが、事務局から見ると発言力が大きかった往時の立ち位置を未だに引きずっていると感じられるらしく、事あるごとに聞き咎めてくる。そう言われても長年親しんだ名称でありなかなか改めることができない。

 かつて実質的に電算業務専属だった自分に代わって、今は先任のY君がシステム管理者である。彼は医事係で4年前から勤務して現行の電子カルテシステムの構築にも携わり、ある程度の内部構造も理解しており利用者への日々のサポートやシステムベンダとの窓口も引き受けていて、彼なしではこの病院の業務は一日とて回らないだろう。
 電子カルテ製品自体はかつて俺が導入したものの後継製品なので基本的な操作方法は同一のはずだが、当時は単なるオーダリングシステムとしてしか運用できなかったのに対し、現在はカルテ記載はおろかほぼすべての業務分野がこのシステムに取り込まれていて、今からではとてもその全容を理解することは難しい。
 自分はと言うと、結局先輩からの引き継ぎは受けることができなかったのだが、システム運用に関して病院が過度にY君へ依存しないよう、彼の支援を行うことになった。システム化した分野が拡大したことでサポートセンタとしての業務量が過大になったものの、システムベンダからそれに見合ったサポートは受けられていない。それを一人で引き受けるのは困難であり、Y君と自分の二人で分担するように…との先輩からの指示である。これは同じような境遇で困難を感じてきた我々の共通認識でもある。
 とはいえY君の業務キャパシティは当時の自分とは比較にならないほど大きく現状では何ら支障を抱えている様子はない。また、新たなボスであるS係長は先輩の意向とは異なり当初は自分にシステム運用を担当させるつもりはなかったようだ。
 いずれにしろ専任のシステム管理業務からは卒業というわけだ。医事職員と言えるほど保険請求に詳しくはないが、委託業者からの問い合わせには応えて指示を出すくらいの知識は持っておく必要があるし、何かあれば自分が責任を取らなければならない。
 
 さてレセプト残業がないと言いながら休日出勤している理由だが、俺が健診外来や労災などの請求業務と併せて、DPC調査病院が提出するデータの作成を担当することになったためだ。当院はDPC病院ではないが、DPC調査事務局への調査協力を行う代わりにいわゆるDPCデータ加算を算定している。日々出来高制で蓄積されていく会計データを修正して矛盾がないDPCデータを作る必要があるが、過去分の請求データとも相互に連動しており一貫性のあるデータを作成するのは実は非常に困難である。日中にできる作業でもなく、提出日前になれば何とか時間を作っては作業を行うことになる。
 明日には当院の診療情報管理士にデータのレビューを行う必要があるので、今夜中にはある程度仕上げないと。