かいてんすし。

 妻が県都に行きたいと言う。義妹夫婦の家に置かれた車のメンテが必要らしい。
 俺は学生の頃から通っている床屋に行きたかったし、先日妻が旅行で上京した際に、俺がいつもお世話になっている友人にとお土産を買ってきたのでそれを皆に渡したい。というわけで午後遅くになったがブリットを走らせた。
 着いてすぐ妻を金沢駅に降ろし、自分は床屋へ。
 床屋の主と例によってとりとめもない世間話をし(これも例によって、いつも俺がその日の最後の客になる)、再び妻を拾いに金沢駅へ。新幹線開業を控え金沢駅は大幅に改修が加えられていて、かつてアルバイトに通った駅の面影はほとんど失われている。
 その後夕食となったが、どうも俺は風邪を引きかけたようであまり食欲が湧かない。食べる量を適当に決められるので回転寿司店に行くことに決まったものの、いつも行くスシローは嫌だと妻。安過ぎてあまりネタが好みではないのは知っていたが…。
 今回はそのすぐ近所にある同じ回転寿司の中でも若干価格帯の高い「海天すし」へ。
 入ってすぐに客の少なさに驚き、席についてレーンを流れる寿司が少なすぎることにも驚く。
 待ってくれ回転寿司は俺のようなコミュ障でも黙って好きなだけ食べられるのが最大かつ唯一の存在意義ではないのか。それがレーンに寿司がなく、人間相手にオーダを強制されるなんて…。
 しかも高い(スシローに比べれば)。まともなネタは一皿およそ200円からで、しかもとても美味しいとは言えなかった。
 妻は自身が選んで入店した手前まずいとは決して口にしないが、その目は既に脱出の機会を窺い始めている。しかしたった5、6皿食べただけで席を立つのはかなり勇気がいることは重々承知しており、その撤退戦を全て俺にやらせやがった。
 その後、口直しに直ちにスシローへ。
 いつもどおり100円で全く値段どおりの期待する必要もないネタを後悔なく食べられるのだからどう考えても最初からここへ来ればよかったのだ。高くて美味しい回らない寿司屋に行こうと思えば(ある程度覚悟はいるが)いつでも行ける土地に住んでいるのに、中途半端な回転寿司店に行く必要なんかない。