再び湯涌へ。


 夕方からF氏と待ち合わせて、湯涌温泉ぼんぼり祭りへ。
 今回はイベント当日なので会場内へは車で乗り入れ不可。金大の角間キャンパス内バスターミナルから臨時のシャトルバスが出ているのでそれに乗る。小松空港航空祭の時もそうだが、北陸鉄道はイベントの臨時バスでボッタクリ過ぎではなかろうか。往復10kmで1,000円なんて…。
 発車間際のバスに立ち乗り。後ろの方へ追いやられてからすし詰めになった車内を見渡すと、年齢層は10代後半から30代頭まで。どうやら俺とF氏は再高齢に属するようだ。
 中程の席に登場人物のコスプレをばっちり決めた可愛らしい女の子がいた。連れのお兄さんとイチャついていて何故か周囲の乗客はそれを必死に見ないようにしている。我々の後に乗り込んできた留学生と思しき金髪碧眼の外国人が笑顔で彼女に軽く会釈をしたのだが、あっさりと無視。
 走行中のバス内を撮影する不届き者がいるようで、俺の後方から車内が何度もフラッシュで照らされ、撮影音も響く。俺の回りの乗客が「マナーなってない痛い奴が乗ってるよね」「コスプレ撮りたきゃ会場で声かけすんのが普通だろ」とささやいている。ブログやmixiに載せたい人がやっちゃったんだろうな…と振り返ってみると、まさに愛機α55で撮ったばかりの結果画面を確認しているF氏がいた。君ぃ…。
 温泉入口の足湯で降車。再びの湯涌温泉だが、前回の訪問時と違って既に入り口からものすごい人だかり。

 見渡す限り、チェックのシャツや暗色の衣装で固めたソレっぽいヲタの人並みが続く。ほとんどが男性客で女性はわずかに見える程度。一般客はほとんど見当たらず、服装がまともな人は例外なくスタッフ腕章をした関係者の模様。
 今夜の神事で燃やしてもらえるのぞみ札の受付に行列ができていた。それを横目に、カメラをぶら下げて通りを歩く我々。

 これは花咲くいろはという作品に思い入れがある人からすれば大変なお叱りを受けるのだが、そもそも作品中の祭りのシーンをほとんど観ていないので何が起きるのかあまり予備知識がなかった。この奥の神社と玉泉湖で作中の神事を再現するというのを耳にしているだけだ。ただ、恐らくメイン会場となるであろう湯涌稲荷神社はこの温泉街の奥にあるので、そちらに先回りを図る。

 通りの家々は今回のイベントに併せて揃いのぼんぼりを軒先に下げている(後で聞いたがこのぼんぼりは富山の祭礼用具店に特注したものだそう)。ぼんぼりの灯りと人波の中を歩いていると、昔訪れた城崎温泉に負けないくらいの活気を感じる。
 我々と逆行して温泉街の入り口に向かう人も多い。彼らの話からすると、入り口側が神事のスタート地点で、そこから行列が神社方向に進んでくるらしい。行列と一緒にいるよりは、やはり通りかかるのを待つのが撮りやすいだろう。

 竹久夢二記念館前にたどり着くと、そこから先はもう一歩も進めないほどの群衆だ。F氏はせっかくなので待ち時間の間に夢二記念館を覗いて来ようという。これは困った。文学には更に知識がなかった。
 20:00ちょうど、神事の始まりを告げる放送と共にスピーカーから謎の民謡が流れてきた。これに併せて行列が出発したようで、通りの遥か向こうで掲げられた灯籠が動き出す。
 ビデオで一部始終を撮ろうとする客も多い。その画角になるべく割り込まないよう撮りやすそうな位置に移動。KissDXのISO感度は1600までだがノイズがひどい。いつも常用しているTAMRONの17-50mmF2.8からIS付きのEF18-55mmに変えてしまう。
 通りの両側は行列が来るのを待つファンで埋まり、立ち並んだ旅館の窓も宿泊客で鈴なり。路上も行列の先頭を正面から撮影しようとカメラを構えたファンと取材のテレビ局スタッフが立ち並び、スタッフは行列の進路を確保しようと走り回っている。





 ようやく現れた行列は物凄い数のファンを従えてゆっくりと進んでいく。行列の先頭である神事の関係者に着物姿の女の子が4人いて、その両脇はスタッフによって厳重にガードされている。
 我々も行列を追って夢二記念館前の広場に入った。行列本体は一旦解散したようで、ここからこの神事のメインイベントとも言える主催者側の挨拶。金沢市が後援していたようで山野市長が登壇し、持ち芸「ようこそ!金沢へ!」を繰り出す。あれは作ってる感がすごいので無理してやらなくてもいいと秘書課は誰も言わないのだろうか。
 その後もアニメ制作会社やぼんぼりの制作会社など関係者の挨拶が続く。このあたりは行政が絡んだイベントには欠かせない部分でもある。
 その後、神事関係者は神社の境内に上がったようでこちらから動きが見えなくなった。実はこの時既にUstreamで中継が始まっていたのだが、情報収集が足りない自分たちはそんなことすら全く知らなかった。分かっていたらIS02で受信しながらもっと楽しめたのに。


 やがて境内から赤い着物を着た女の子が一人降りてきた。かなり意味ありげなシーンだったがそれが何なのか分からない。ここで初めてIS02でネット検索して、これが一連の神事で呼び出された神様だと気がついた。
 女の子は足元に群がるファンに撮影のチャンスを与えるようにしばらく佇んだ後、温泉街の更に奥にある玉泉湖に向かった。
 玉泉湖で今夜の一連の神事を締めくくるお焚き上げが始まった。玉泉湖は入場規制のためその模様を直接見ることはできないが、広場には神事の内容を中継するモニタが設置され入れなかった参加者が文字通りかじり付くようにして眺めている。

 途中で気づいたのだが、一連のイベントには後援に北國新聞が噛んでいた。テレビニュース向けの取材と別に、この中継スタッフも北國新聞テレビ金沢から借りてきたのだろう。こういうイベントのUstream中継はマニアが即席の機材で撮りっぱなしというのが多いが、これは本物のテレビ放送用機材とスタッフによって行われているのでカメラワークが普通の中継番組と遜色ない見事な出来栄え。
 試しにIS02で受信を試みたがネットに繋がらない。これだけの数のファンがいて、当然一定数は何らかのモバイル端末で同じようにUstreamを受信しているのだろうから帯域が食いつぶされているのだろうか。付近の旅館に設置されていると思われるWifiアクセスポイントを拾ったが遠いせいか接続も不安定で結局受信できず。
 22:00頃、神事終了を告げる放送が流れ、宿泊客以外の参加者は一斉に温泉街の出口に向かう。F氏は別に慌てなくてもよいといい、我々は祭りの余韻が残る温泉街を散策。
 温泉街中程にある旅館かなやの玄関先に人だかりができていた。

 いくつか小さいぼんぼりと、その下に何か書かれた札が下げられている。F氏によると出演声優か関係者が書いたものではないかとのこと。一枚一枚写真に収めていくファンが途切れる様子がない。

 温泉街入り口の土産物屋、喜船商店は帰りがけの最後のお土産を買おうとする客で溢れていた。イベントと関係なくても何か湯涌温泉のお土産があってもいいかと思ったのだが、混雑するレジを見て諦めた。
 帰路のバスに乗るまで30分ほどの待ち時間。
 天気がよく高く登った月明かりで温泉街は素晴らしい眺めだった。
 
 帰路のバス車中では疲れ果て空腹の我々は無言。自分に至ってはもはや歩く気力もない有様だったが、ブリットを走らせて下山、夕食のため王将へ立ち寄った。客の多くは湯涌のイベント帰りらしい若者で、疲れ知らずで楽しそうに盛り上がっている彼らを見、自分の歳を省みて暗澹となる。
 ではその後そのまま帰宅したのかと思えば、もちろんレジャランに向かいカラオケとなった。しかも3時間。帰宅したのは夜が明けて朝7時。
 まだ若いと言えるのか、果たして。