ショウガを空に。

 その後、市内のPCショップを回ってから夕食に。どこに行くかぐだぐだと考えたが、F氏の経済状態と彼がいつも行くお勧めの店との紹介もあって回転寿司のスシローに決定。
 着いてみるとまだ18時頃にも関わらず大変な混雑だった。長い待ち時間の末に席に着くと、F氏はいきなり「うどん」をオーダした。寿司屋に来て最初のオーダがうどんだ。ちょっと驚いたが、もっと驚くのはこれからだった。
 彼はうどんを一口すすった後、目の前に置かれていたショウガ入れのフタを何気なく開けて、不自然に多いショウガを取るとそれを一気に食べ始めた。普通ショウガは寿司の後に口直しに食べるもんだろう。そう思っていたが違うらしい。
 彼はほとんど寿司を取ることはなく、うどんとショウガを交互に食べ続けた。
 ついにショウガが空になったところで彼は箸を置いた。見ればうどんと寿司2皿、500円玉一つあれば十分な金額になるはずだ。とても成人男性の夕食として足りるようには思えないが、彼に聞くと「ショウガが胃のストッパーになって無駄食いを防止する」のだという。また彼の言によれば「ショウガは漢方薬の原料でもあり、大量に食べればそれだけ健康になる」のだそうだ。
 職が不安定だった頃これで食費を節約していたそうだが、500円以下の売り上げでショウガ1箱なくなることを考えるとこれは店に対するテロと言っても過言ではないかもしれない。
 久しぶりに会った俺にジョークを飛ばしたのだろうか。それにしては体を張ったネタだと思う。
 普通ショウガ1kgも食わんもの。