忘れていく出来事。

 ここだけの話。
 実はこの防犯カメラシステム、モノになるかどうか不透明で、俺が全くの私物だったカメラを職場に持ち込み、当時建屋の工事で仮の玄関となっていた通用口にテスト環境を構築してテスト稼動を開始したその日に、オフィス内で起きて大問題となったとある事件の一部始終を偶然、音声込みで録画していたのだった…。
 その事件は加害者・被害者とも示談とし刑事事件としては解決済みとなってはいるが、そこに至るまでに起きた周辺のゴタゴタの中では録画データはとても表に出せるような状況ではなかった。録画に気付いた時には既に加害者側・被害者側からの事情聴取は済んでおり、それに基づいた状況把握がされた後だったから、それらを一変させる恐れもある代物を、私物で非公式に記録していたなどとはとても言えた話ではなかったのだ。
 今回の復旧後に思い出して調べると、保存指定期限を超過したためにその後のサイマル録画に上書きされて問題のデータは消失していた。このため、そんな記録が存在していたという証拠はなくなったわけだ。
 だが個人的には後ろめたさが付きまとう。加害者・被害者はそれぞれ処分が下り一方は職を辞すことになった。
 この録画データを早期に出していれば、何か状況は変わったのだろうか?。