テレアポ。

 昨日は来月のイベントに備えて準備のため出勤。フロアに入るとウチの係はボスを除く全員が揃っていた。I君は別係の依頼があって急遽出てきており、K君も自身の仕事の追い込みで休日出勤。
 そして俺の向かいに座るYさんも。
 このYさん、今年行われる予定のある事業の専任担当者を務めているのだが、その進め方が遅いとボスに注意され、この数ヶ月間何度か言い争いをしてきたところだ。
 I君はYさんの業務補助も命じられており、関係者向けのミーティングにはYさんと共に欠かさず出席し、スケジュールから見て進捗が遅いと危機感を持っていた。参加者を百名単位集めなければならないのに募集の準備は何も行われていない。Yさんに指摘したが聞く耳を持ってもらえないと感じ、ボスに直言して係全体での協業へ切り替えてもらったがしかしうまくいっていない。
 Yさん自身の業務の振り方にやや問題がある。基本的に、我々に対して業務の全体像について説明はせず、自分自身に解決できない疑問や障害が発生した時だけ、その部分の業務を明かしてそのあたりで手の空いている誰かに質問をしてくるのだが、業務の分担ではなく単に分からないことへの質問先にされているに過ぎない。
 Yさんに業務について質問すれば答えてはくれる。しかしやはり体系だっての説明ではなく、そうこの作業はこういうやっかいさがあって困っているんです、ああいうやり方を引継されていて大変です、そんな風に自身が問題を抱えているということを匂わせくるだけだ。だけれども絶対に「手伝ってくれ」とは言わない。
 傍から見ていてYさんの業務は明らかに遅れそうだ。人は集まらず、些細な書類の整備に気を取られて勤務時間が過ぎていく。
 この日はというと、どうやら電話をかけるために出勤してきたらしい。つまり、100名以上の事業参加者を集めるため、過去の参加者名簿から一人ひとり電話で参加意思を確認して回るのだ。都会で学生相手にテレアポを取るのとはワケが違う。俺はYさんに、我々に何かさせるような仕事があったらいつでも指示して欲しい、電話でも、訪問でも、これだけ手数があれば何でもできるから…と言った。だがYさんは、まず、とりあえず参加してくれそうな人に優先して当たっているところで、これが済めば残りの参加者枠についても電話して行きたいと答えた。つまり、今日は必要ない…と。
 ふと隣を見ると、ついさっきまでいたI君とK君は帰宅してしまっていた。この2人はYさんの態度に呆れ果て、もう協力する気がさらさらなくなっている。
 どうなるんだYさんの仕事は…。