レッドブル。
開催を知ったのは一ヶ月ほど前だったか。
アメリカで復元された零式艦上戦闘機が零戦里帰りプロジェクトで日本に一時帰国しているという。
さて気になるのは一般公開の機会があるのかどうか。
昨年は何度か国内でデモンストレーションフライトがあったようだが、遠隔地ばかりで行くことはできなかった。
その後しばらくスポンサーが見つからなかったようで音沙汰がなかったが、今年は千葉のレッドブルエアレース2017のアトラクションとしてフライトするという。
これは…行かなければなるまい。
しかし行く決心が付いたのは開催日前日、つまり昨日の夜だった。ゴールデンウィークに佐世保まで行ったばかりで予算がないことは重々理解していたのだ。が、エンジンも別物の復元機とはいえゼロ戦の実物のフライトをこの眼で見られる機会が後どれだけあるというのか。
散々迷った挙句に、日付が変わる10分前にエアレースのチケットを注文した。
今回妻は仕事らしく、俺の単独行動となった。素晴らしい。
少し起床が遅くなり、新幹線に乗れたのは正午前。東京駅を経て海浜幕張駅へ、そして会場の幕張海浜公園にたどり着いたのは16時過ぎだった。
エアレースは初めてだったが、間近で見るアクロバット専用機による低高度での機動はものすごい迫力だ。レシプロエンジンの単発機は第二次大戦中には既に性能向上の限界を迎えてしまっていたと思っていたが、重い火器や無駄な燃料を捨ててアクロバットに特化した機体はまるでラジコン機のような常軌を逸した飛び方をする。
俺が買ったチケットは三脚の持ち込みが認められたカメラマンエリアだが、もはや割り込む隙も無いほどの混雑だ。しかも当たり前だが砂浜なので、持参したカメラリュックや三脚は直ちに砂まみれになった。
本命のゼロ戦は予選終了後、夕日の中から現れた。
足下げのまま、先ほどまでレース出場機が速度を競っていたコース上をやや高い高度でパス。
復元の結果どこまで機体強度が確保されているのかは分からないが、あまり無理はできないのだろう。
多数のカメラでシャッターが切られる中、機体は再び夕日へと消えていった。