実戦訓練。

実戦訓練。

 航空機相手の超高倍率レンズでフルタイムMFなんて使いこなせる気はしないが、何事もやってみないと分からない。
 それで午後遅く、小松空港へ離発着機の撮影練習に赴いた。
 いつも最初に行く滑走路北側、ランウェイ24エンドに行くと「路肩駐車禁止期間」の看板がいくつも立っている。全面禁止という言い方ではないのが不思議。一旦ブリットをUターンさせてすぐ近くのスカイパーク駐車場に停め、機材を背負って滑走路端へ向かう。
 俺の機材なんか鼻で笑えるような高級機材を担いだかなりの人数の撮影者達が脚立にまたがり滑走路にレンズを向けていた。カーゴルクスのB747が到着する時間に偶然飛び込んだようだった。
 こういう所で周りの機材に気後れしてはならない。6Dと150-600mmにエクステンダx2をマウントし、三脚に載せた。
 航空無線を聞いていた誰かが「背後から来るってよ」と叫んだ。
 小松空港の場合、俺が来る時は大抵北風が強く着陸機は大抵反対側のランウェイ06エンドから進入してくる。ここに陣取っていた殆どの撮影者には予想外だったようで、それなら広角レンズを持ってくればよかったと肩を落とす姿がいくつもあった。
 やがて北の空にジャンボの巨体が現れた。早速600mm…もとい1200mmを構えるが、画角が狭すぎて、こちらに向かってくるジャンボをファインダーに収めるのが大変だ。
 そして、やっと捉えたジャンボにフォーカスを合わせようとするものの、超高倍率ズームレンズ150-600mmの弱点…フォーカスリングのピーキーが顕になる。
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 ちょい前ピン、戻したつもりがまた後ピン、なかなかフォーカスを当てられない内にジャンボは距離を詰めてくる。
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 そうして一瞬の内にジャンボの巨体は頭上を覆い、強烈なエンジン音と風圧を俺にぶつけて通り過ぎていった。
 
 ジャンボ目当ての人々がバラバラと立ち去る中、俺は場所を変えて撮影を続ける。今度はランウェイ06エンド側だ。
 24エンドは敷地のフェンスから中央よりに掛けて少し標高が高くなっていて滑走路への見通しが悪く、こだわる人には脚立が必須。しかし06エンドの方は滑走路より少し高い位置に市道が走っており、その路肩は更に1mほど盛り土されているので24エンドまで一気に見通せる。
 残念ながら祝日のため、スクランブル以外の自衛隊機の飛行はない。そのためか、既に陽も落ち始めたこの時刻にここでカメラを構える人は誰もいなかった。
 小松空港乗り入れ機の発着時刻を調べると、1時間ほど待てば先程のB747が離陸するようだ。また中型・小型機の発着もある。
 待つ間にもう少し操作を試す。
 600mmでは滑走路脇の草地が少し画角に入ってくるが、1200mmでは滑走路面がほぼ完全に画角を横切るほどになる。倍率だけは確かに凄い。
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 上は夏に600mmで撮影したもの。
 下が今回1200mmで同じ位置から撮影したもの。
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 一方で望遠端の1200mmでは開放F値が13にまで落ちるため、ISO値をかなり高めにしないとシャッター速度を上げられない。AFはやはりライブビューモードだと正常に動作する。かなり暗い状況でも何とか合わせてくれた。
 17時少し前の夕暮れ、ISO値8000でもシャッター速度は1/20秒より遅くしないと露出が不足し始めた。ISO値は自動設定時に12800も選ぶように設定しているが、飛行中の機体を撮るのには足りない気がしたので手動で16000にした。それでやっとシャッター速度1/200秒。
 そのうちジャンボが前照灯を点灯させ滑走路上をタキシングし始めた。適正露出を合わせるのは諦めて、マニュアルフォーカスに集中する。しかし暗すぎて合わせにくい。前照灯の輝点を頼りに頑張ってみる。

 ジャンボは最大出力のエンジン音を轟かせて小松の滑走路を蹴って、俺の頭上を再び飛び越えて行った。振り返りながら機体を追うが、夕闇に浮かぶ機体にフォーカスがピタリと合ったコマはほとんどなかった。
 
 今日は撮影を始めた時刻が遅すぎて照度が不足し、練習としては不十分だった。しかし、AFが使えず暗い超高倍率レンズは俺の腕では実用にならない事が明らかになった。
 特に高速で動く被写体相手だと手も足も出ない。
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