インジケータ点灯。

 目が覚めたのは10時頃だったと思う。
 妻が県都に行かないかと声を掛けてきたが、行くとも行かないとも決まらないまま有耶無耶に話が終わった。
 妻が溜まっていた家事を片付けていたが、俺はそのまま二度寝して気が付けば15時頃になっていた。
 実は先日県内のカメラのキタムラで中古の広角レンズを見かけてもう一度価格を確認したいと思っていたので、そこを経由して県都に遊びに行くかと申し合わせて出かける準備を始めたのだが、二人とも支度ができたのは更に遅く16時過ぎであった。
 妻は当初例によって義妹夫婦宅に行くつもりだったようだ。というのはクリスマスシーズンも近づき、親戚一同が集まったところでクリスマスパーティをしようという話が持ち上がっており、その準備をする必要があるらしいのだが、流石にこの時刻から押しかけては迷惑になる。普段からどうにも義妹夫婦宅にはあまりに気軽に立ち寄り過ぎのように思うのだが、そこはその一族の人々の距離感・関係性の問題か…とにかく、今日はそこまで足を伸ばすのはやめておこう。
 
 さて、ブリットに乗り込んでエンジンを始動したところでインパネの異常表示に気がついた。VSC、ブレーキ警告、ABS、そしてTRCの各インジケータが点灯状態なのだ。ECUの誤動作かと一旦エンジンを切って再始動したがいずれも消灯しなかった。
 ブリットの取扱説明書には、特にブレーキ警告灯とVSC警告等が両方同時に点灯している場合には、直ちに走行を停止して販売店へ連絡するよう記載されている。
 いつものトヨペット店へ問い合わせ、今から入庫し点検してもらうこととなった。各警告等はそれぞれ走行に致命的な障害をもたらすものではないだろう、とのこと。なるほど、VSCもABSもTRCもない車に乗ったつもりで走ればいいのだ。カリーナEDはまさにそうだったのだから何も不安はない。
 トヨペット店近くの食品スーパーに妻を降ろしてブリットを入庫。
 OBDを介した障害診断には30〜40分ほど掛かったか、ひとまず車体後部右側駆動輪の速度センサが故障しているらしいとのこと。部品代・技術料で32,000円と見積もられた。もちろん部品は在庫がないので、納品され次第改めて入庫し交換してもらうこととなった。
 ついでに、先日切れてしまったルームランプ用のマルチヒューズも数個注文した。意外なことにこのマルチヒューズについて営業担当者はおろか技術員も知らなかったようで、切れたマルチヒューズの現物を示したところ「これトヨタ車用のヒューズですか?」と聞き返された。とすると、交換頻度が極めて少ない…あまり切れるようなものではない様子である。
 
 ところで、対応してくれた営業マンは「今日ちょうど新型プリウスが展示されたので見ていってほしい」と声をかけてきた。
 店内の展示スペースに置かれた新型プリウス。色々と注目されている車だけに事前に読んだいくつかの記事で今回の(好意的な)特徴は知っていたが、実際に見てみるとどうにも気に入らない部分も目に付いた。
 ラゲージルームは横幅と奥行きは広いが、高さが足りない。ボディのデザイン的に車体中央のドライバー着座点から後方まで徐々に天井が下がっているためだが、ブリットに慣れた俺からすると容積不足だった。それにラゲージルームの床面よりテールゲートが高くなっておりまるで敷居のようだ。面積を広げて収納量を高めるつもりだったのだろうから、できれば積み下ろしの際に邪魔になるような段差は排除してほしかった。
 リアシートはラゲージルームと貫通できるよう2分割で前可倒式だが、着座状態でもヘッドレスト越しにラゲージルームに手が伸ばせる。ただし、リクライニングはできなかった。アリオンでも実現できていたのだから、少しでも後席の居住性を良くするためにリクライニング機能があればよかった。
 運転席に座ってみるとシートには取り立てて気になるものはないが、最近の車の流行ではあるが車両の先端、特にコーナー部分が全く見えないのが困った。またセンターメーターなので視線移動に違和感が残る。
 助手席側にはおかしな意匠があった。膝上のグローブボックスとエアバッグ開口部の間、ちょうど手を伸ばしたあたりに、水平にペットボトルが横に一本収納できそうなくぼみがある。気付いた時には多分小物置きのスペースなのだろうと思ったが、よく見るとそのくぼみはドア側へ行くにつれて捩れがついて、最後には下に開口している。何か物を入れてもちょっとしたカーブで横Gが掛かるとポロポロと零れ落ちるわけだ。
 フロントウィンドウの上部中央には用途不明の箱のような部材が取り付けられている。スバルのアイサイトのような前方監視カメラではないように見えるが、営業担当者に尋ねても分からないと言う。そのうち調べてくれた技術員が、オートワイパーのセンサー収納部だろうと教えてくれた。この周辺にはサングラス収納ケースも設けられていた。
 フロント側ドアを見ると、またまた奇妙な意匠があった。ドア内張りが車体前方部分で少し持ち上げられているために、ドアウィンドウの前端部分の一部で視界が制限されているのだ。ダッシュボード周辺のラインとドア上端を一致させるためなのだろうが、ダッシュボード側を下げればよかったのでは…。
 エクステリアの尖り具合は、リアドア周辺は往年のアルシオーネSVXやWill VSを髣髴とさせるがフロントマスクは独特だ。
 今回のモデルチェンジでようやく4WDが設定されたとのこと。ただし積雪地域で望まれているようなものではなく、加速時の性能向上に主眼が置かれているようだ、との解説だった。近年は積雪量も少なく、それで十分のように思われる。
 
 ブリットの診断が終わるまでしばらく眺めていたが、自分で買う気にはならない車だった。