来客。

 今俺は当院の労災関連の業務を担当しているが、よく連絡を取り合う所管労基の担当者がDrとの面談のため来院した。今年異動して来たその担当者と顔を合わせるのは初めてなのだが、今まで電話の声から俺と同年代かもう少し上くらいの人物だと勝手に想像していた。しかし名刺交換した当人は採用間もない新人のような若者だった。
 Drは基本的に保険会社や労基、警察や保険者などと面談する際に患者の不利益になりそうな内容だと実にけんもほろろの態度を取ることが多い。今回の面談の目的は患者から労基への申請事項について疑義があり、診察したDr自身に直接内容確認をするためだったが、Drは最初から喧嘩腰で何を聞いても「診断書に書いたとおりです」「何を疑問に思われたのか理解しかねますね」と取り付く島もない。
 担当者は腰が低くあまり交渉事に強いとは思えない印象だったが、辛抱強く説明と質問を繰り返してどうにか疑義を詰めていき面談を終えてみせた。
 診察室から出たところで担当者は「ちょっと怖くて、ドキドキしました」と苦笑い。Drも敵意を持っての態度ではないが、失礼はお詫びしますと代わりに謝っておく。
 自動車事故や生命保険・疾病保険の担当者あたりだと本当に会社都合の主張や押し付けをしてくることが普通にあり、対応しながら腹立たしさを抑えるのに苦労することは多い(逆に相手も治療費回収に形振り構わないこちらを散々蔑んでいると思う)が、どのような制度であれ最終的には少しでも患者にとって有利なように使っていければいいのだが。