年甲斐もなく。

 数日前に2chでゲーセンの衰退について言及するスレッドを読んでいると、バンダイナムコがアーケード向けのフライトシューティングの新作「マッハストーム」を稼働させていることを知った。
 20年前、県都のゲーセンにも設置されていた傑作「エアーコンバット」シリーズと、比較的よく似たゲームスタイルらしい。
 「エアーコンバット」は1993年頃にリリースされた主観視点のフライトシューティングだ。
 それまでにも類似したシューティングは多数制作されており、有名なものではセガ製の往年の名作「アフターバーナー」シリーズがある。アフターバーナーシリーズは筐体に油圧・空気圧式のダンパーを備えたシートを持ち、プレイ中の機体のロール機動や機体の増速などに併せてシートを急激に傾斜させることでプレイヤーに実機とよく似た挙動を体感させてしまう恐るべき作品だった。(この体感型の作品として、行き着くところまで行ってしまったのがやはりセガがリリースした前代未聞の地球ゴマ筐体「R360」と専用に改修された「G-LOC」だ)
 しかし、エアーコンバットはそれらの作品を一瞬で過去のものに追いやった。画面描画がポリゴンによるフルレンダリングだったのだ。
 初めて見た時の衝撃はすごかったのを覚えている。金と保守の手間が掛かる体感型筐体は使っていなかったが、それを穴埋めするだけの魅力があった。それまでにもポリゴン描画を用いて制作されたゲームはいくつもあったが、描画される航空機の美麗さは群を抜いたものだった。
 その後継作品として描画の品質を一新し、前作では基本的に1対1の戦闘のみだったのを1対複数機までとしたエアーコンバット22も登場、そのまま初代PlayStation向けに「エースコンバット」として移植されて以降、ナムコのコンシューマ向けゲームの看板シリーズになった。
 俺が学生の頃に一旦卒業したはずのテレビゲームに再び戻ってしまった元凶でもある。それからPS・PS2XBOX360とプラットフォームを代えながら、エースコンバットの新作がリリースされるたびに次々購入し続けてきたが、アーケード版のエアーコンバットシリーズは2作目の22で一旦終了となってしまい、以来19年もの間何も新作は出て来なかった。
 趣向が似たフライトシューティングはその後もセガより「ストライクファイター」など細々とリリースされてはいたが、90年代初めから景品の品質向上で一気に設置台数が伸びてきたUFOキャッチャーやビートマニアなどの音楽体感型ゲームに押されてその後はほとんど音沙汰がなくなってしまった。
 …それが、である。
 この新作の存在を聞き及んで、放置しておれるまい。
 そのスレッドでは稼働台数が全国でも極端に少ないと書かれていた。我が県ではどうか…と調べたが、県内には稼働機はなさそうだ。隣県まで見ると富山県内には高岡市富山市に数台の設置店舗が見つかった。
 
 今日になって、早速目当ての店舗へとブリットを走らせた。
 昔一緒にゲーセンに足繁く通ったN氏を誘ったが、全く乗り気でなかった。県都で出会った当時、ゲームと言えばわずかにMSX用のソフトしか知らなかった俺にゲーセンの何たるかを叩きこんで来たゲーセンマニアのN氏だったが、いつの間にかゲーセンから足が遠退き今ではほとんど近寄ることはなくなっている。それではと、先日何年かぶりに連絡が来たT氏を誘ってみると、実家に彼女が来ていてそれどころではないようだ。昨日が大安だったから、何かあったのかもしれない。
 その代わりに富山出身のH氏が帰省しているはずだから連絡してみろと言うので電話すると、ひどい鼻声だった。インフルエンザらしく先週末から仕事を休んでおり、治るまで会社に戻ってくるなと言いつけられているので困っているという。
 まぁ、連れはないが仕方ない。一人なら寄り道だって気軽にできるじゃないか。そう思い直す頃にはブリットも富山県境を越えていた。
 
 道すがら、カメラのキタムラを見つけて入ってみた。あまり大きい店舗ではなかったが、中古品コーナーにはレンズキャップやフィルタなど意外と中古が少ない商品を取り揃えていたが、こういうジャンルの品は見つかるかどうかわからない店頭販売品を丹念に探すより、WEBのオンラインショップで中古かオークションから探すほうが手っ取り早いと思う。店員にじろじろ眺められながら、何も買わずに出る。
 再びブリットを走らせて目的地へ向かう途中、氷見市の海岸にある比美乃江公園にて一休み。あいにく曇りがちで風の強い日だったが、遠くの滑川や魚津まで視界が微かに開けていた。
 そこから更に30分程も走ったところで目的地である「ゲームスポット207」に到着。
 着いて分かったが隣がハードオフとカメラのキタムラだった。ゲームプレイは後回しにして、ハードオフとカメラのキタムラをのぞきに行く。
 またキタムラの中古品コーナーへ行ってみると、SIGMAキヤノンEFマウント向け魚眼レンズが2万円台で置いてあった。魚眼レンズはニーズが少ないのか中古が店頭で見つかるのは珍しい。早速店員に声をかけて触らせてもらおうとしたが、店員が試写用のEOSボディにマウントしようとしてできなかったことからミノルタマウントの誤りだったことが分かる。残念。
 ハードオフの方は普段行く石川の店舗と違って、店舗が狭いせいか商品がぎっしりつめ込まれていてまるでドン・キホーテのようだった。いつもの様にジャンクコーナーに陣取って1時間程も家探ししていると、カメラ機材のカゴの中から珍しいものを発見。EF35-80mm 4-5.6 PowerZoomをマウントしたままのEOS 700QDだ。
 何が珍しいってこのレンズ、キヤノンの純正EFマウント向けレンズでは最初で最後の電動ズーム式なのだ。鏡筒にはズームイン・ズームアウトの2つのボタン以外は何もリングやボタン、スイッチの類がない。AF/MFの切り替えすらできず完全にAF専用となる。撮影した時の描写については値段相応らしいが詳しくは知らない。
 ボディのEOS 700QDもまた割り切った製品で、一眼レフであるにも関わらずコマンドダイヤルがない。ということはモードダイヤルにもAv・Tv・Mの各モードが存在せず、現行モデルで言うところの「かんたん撮影モード」かもしくはプログラムモードしか使えないということだ。本来このボディとレンズがセットで発売されていたはずで、手に持った時の大きさは一眼レフだけあってやや大きめなのだがコンパクトカメラのような撮影しかできないという、何とも中途半端な製品である。当然価格帯は安かったはずで、一眼レフ型カメラの宿命で安いモデルはより上位機種への誘い水になっているのだが、700QDはあまりの機能限定ぶりにそもそもユーザがどういう理由で購入していたのかちょっと理解に苦しむ。いやまぁ、買った人がいたからこそ今こうしてジャンクで手にすることができるわけだが。
 貼られた値札は1,000円。ジャンクで1,000円というのは高い気がするが、ボディ側のミラーや駆動部の摩耗状態がはっきりしない一眼レフ廉価機なので、稼働には問題はないもののジャンク的な扱いをされているだけなのかも知れない。試写したいが生憎と6Dはブリットの中にあるし、仮に6Dで試写して6D側に不具合が出る恐れがある。とりあえず購入して、不具合があったら1/3に買い叩かれるとしても別のハードオフにジャンクで売ってしまえばいいかと思い、購入。なお、店員にこのボディはいらないのでレンズだけ売って欲しいと頼んでみたが、それぞれ個別に買ってもまとめても1,000円より下げられませんと言われてしまった。
 
 改めて、本来の目的だったマッハストームをプレイすべくゲーセンへ入店。県都のレジャラン本店より品揃えが充実している気がする。
 店内をウロウロしていると、奥の方にマッハストームを発見。よく見ると、同じナムコバンダイからリリースされている「ガンダム 戦場の絆」と同じカプセル型筐体だ。つまり映像は半天型のスクリーンに投影するのか。素晴らしい。
 ひとまず、1,000円札を両替して筐体に乗り込んでみる。エアーコンバットとは異なり、フライトスティックはサイドスティック仕様。スロットルには特にスイッチはなく、足元にラダーはない。
 100円硬貨を入れてゲームスタート。自機は「エースコンバット6」で登場した架空機CFA-44だ。ゲームの演出は「エースコンバット アサルト・ホライゾン」より強めの効果で、半天型スクリーンによる臨場感も相まって素晴らしい。
 …。
 ……。
 しかし、何かが違う。
 何が違うというのだ。何が…。
 少し遊んでみて気が付いた。困ったことに、このゲームは「アサルト・ホライゾン」の「ドッグファイトモード」が延々と続くだけだったのだ。なるほどスティックで若干の機体制御はできるのだが、エアーコンバッドやエースコンバットのように全天を好きなように飛ぶことはできず、シナリオ進捗で予め決められたコースを辿って進む際に、視界外に現れる敵機に照準し直す程度のことしかできないように思われる。
 なるほど確かにフリーフライトが可能だとすると飛行機の挙動に馴染みがないプレイヤーだと敵機を見つけることすらできない場合がありうるので、何らかの形で飛行コースを示してやる必要はあるかも知れないが…。
 「アサルト・ホライゾン」はXBOX360でも発売されたが、このドッグファイトモードが気に入らなくて、エースコンバットシリーズの中で初めて購入を見合わせていた。エースコンバット自体そもそもライト層向けのゲームデザインで、もしある程度戦闘機の挙動にリアルさが欲しければ「エナジーエアフォース」など他のシリーズの方がいい。しかしアサルト・ホライゾンはあまりにライト層に向き過ぎていて、次回作ではきっと改善されるだろうと思っていたので、このマッハストームを見てバンダイナムコにその気がないことを痛感してしまった。
 しばらく遊んでいたが1ミッションも比較的短く、インカムペースが早いと感じた。この筐体ではミッション内でエクストラモードをクリアしていれば1ゲーム分追加で遊べたが、これは設置店舗の裁量だからどこでも同じというわけではない。
 繰り返しになるが演出効果は素晴らしいし爽快だった。俺が勝手にエアーコンバットの再来と思い込んで期待しすぎただけなのだ。
 
 片道3時間近くもかけて来て、これだけで帰るのも勿体無い。他に遊べるものはないかと思っていると、店舗の一番奥に「ガンダム 戦場の絆」を発見。リリースから数年経った作品だが実は今まで一度もプレイしたことがない。と言うのは、単にコインを入れて即ゲームスタートできるそれまでの大半のゲームと違い事前申請と登録作業が必要で、どうやって遊んでいいか分からなかったのだ。今にして思えば専用端末に適当にアカウント名などを入力して専用ICカードに書き込むだけで大した事ではなかったのだが。
 いい機会なので試しにやってみるか。店内の自販機で専用ICカードを購入し、筐体近くに置かれた専用の情報端末で自分が今後名乗るアカウント名を作成。次に誰も使用していない筐体を探して乗り込み、カードスロットにICカードを入れてからプレイ代金として300円を投入。300円…物価が上がったとは言え、アーケードゲームで1回300円取られる時代になるとは。
 店内では他に何人かプレイ中だったが、初めての自分が協同ミッションで迷惑をかけるわけには行かないので単独ミッションを選んでみた。ゲーム内容としては、初代PS向けにリリースされて以降、これまで家庭用ゲーム機向けに多数発売されてきた主観型のガンダムゲームと全く同じで、何か目新しいギミックがあるわけではない。やはり半天型スクリーンの臨場感が唯一無二の特徴だ。操作性などで言えば、XBOX360版「機動戦士ガンダム オペレーション・トロイ」の方が優れているように感じる(…が、ほぼオンライン専用ゲームのくせにユーザが少な過ぎて今では全く遊べなくなっているのだから問題外だが)。
 持ってきたDMC-FT2でプレイ動画など撮りながらしばらく遊んでいたが、何せ300円で2ミッションしかできないので勿体無いため終了。
 帰り際にもう一つだけ「ガンスリンガーストラトス」なるガンシューティングをやってみた。筐体には2丁の銃が備えられていて、2丁を縦や横に組み合わせることで武装が変化するらしい。
 他のお客のプレイの模様をしばらく観察していたがどうやら自分にもできそうだと感じて硬貨を入れたが、すぐに後悔した。銃にはそれぞれ親指で操作できるジョイスティックが付いていて、これで前後左右に異動したり視野を振ったりしなければならなかったのだ。移動しようとジョイスティックを操作していると敵への攻撃がおざなりになり、敵へ発砲していると移動を忘れて袋叩きに遭う。移動しながら敵を撃っているつもりなのに、気がつけば移動したい方向めがけて発砲するだけだったり。全くゲームになっていない。俺はこんなに鈍臭かったのか。
 あっという間に終わってしまい、銃を置いて隣を見ると、高校生くらいの美人の女の子が見事な腕前を披露していた。周囲の筐体と見比べて見ると、その女の子がこの場で最も上手いらしい。
 鈍臭くなったというか、加齢だな。
 
 帰路、先日購入したテレビに接続する録画用HDDを妻から頼まれていたのを思い出して、途中にあった100満ボルトLacieの2TBのを購入。
 途中でZ君とK君から電話がかかってきて、今居酒屋にいるので出て来ないかとの誘い。今から帰っても遅くなるので一旦断ったが、何時になってもいいから来てほしいと言う。帰宅したら疲れてとても動く気にならないだろうと思っていたが、案の定そのまま眠ってしまい、誘いはドタキャンとなった。