妻のカメラ。

 妻の旅行の準備が進んでいる。と言っても何度か海外旅行の経験がある妻は旅行用品も持ちあわせており、宿泊先は義妹夫婦のアパートメントなのでそれほど大した準備があるわけではないようだ。
 旅の記念に写真を撮ってきて欲しいが、妻の愛用するCanon Powershot A570isは何度かの落下による破損と持病らしい電池室接点の抵抗増加による稼働時間の短縮でとても安心して持ち歩ける状態ではない。
 自分のEOSを貸し出しても恐らく使いこなせないので無駄だろう。では、コンパクトタイプのデジカメで使いやすそうなものを新たに購入した方がよさそうだと考えた。
 予算は最大で3万円と設定。メーカーは、妻のPCにインストール済みの運用支援アプリケーションが共通であることからCanonとする。
 Canon製のコンデジはIXYとPowershotがあるが、今回はPowershotとする。理由は2つあり、一つはA570ISがもはや絶滅危惧種となった光学ファインダ装備機であり、かつ単三乾電池であったこと。光学ファインダ搭載機はPowershot A1200潰しの利かない専用電池より手持ちのGPSロガーなどの機器と使い回しができるeneloop等の充電可能な乾電池での運用が便利だった実体験からで、現在Canonから販売されている単三駆動機はPowershotブランドにしかないため。
 この条件を全て備えているのは、Powershot A1400のみ。光学ファインダなしならSX160ISもある。どちらもセンササイズは1/2.3型で1,660万画素と、センササイズに比較して高画素である。画質は恐らく一般的なコンデジ程度で、要件を満たしはするが画質は満足できるものではないだろう。

 使い勝手にこだわるなら、SX160ISは撮影モードセレクタがダイヤル式だ。最近は部品点数を削減するためかモードセレクタはボタン式が多いが、目的のモードに切り替わるまで何度も小さなボタンを押し続けるよりは、ぐるりと回せば一発で切り替わるダイヤル式の方が使いやすいに決まっている。残念ながらA1400では前モデルのA1200にはあったモードダイヤルが省略されている。
 型遅れで構わなければ、光学ファインダとモードダイヤルの両方を備えたA1200がいいが、つい先月くらいまではネット通販に9,000円台の新品がいくつも販売されていたのに今月に入ってから急に新品価格が定価と変わらない25,000円台にまで戻り、中古価格も9,000円台に高騰している。
 もう一つ、可能であれば仕様に盛り込みたいのがGPS機能。自分がEOS KissDXやDMC-FT2でGPSロガーm-241を併用しているが、やはり面倒なのが撮影後の位置データの取り込みと書き込み処理だ。KissDXではRAW画像で撮影しているが、このRAW画像に位置情報を書き込む方法が最近までなかった。現像処理後に生成されるJpeg画像にならm-241標準のユーティリティや有名なカシミール3Dで簡単に書き込めるが、現像処理のやり直しでJpegを作りなおせば当然位置情報も書き込み直しとなる。カメラ内で最初から位置情報が書き込まれていればそもそもそんな手間は必要ない。
 ところが意外にGPS内蔵のコンデジが少ない。需要がないわけではないようだが、どうも筐体のサイズの都合上バッテリが弱いコンデジにあって、GPSユニットの消費電力はなかなか無視できない足かせであるらしい。前モデルで内蔵されていたGPS機能が後継機で省かれるケースもある。単三駆動機ではCanonを始めどのメーカ製もGPS内蔵機種はなかった。
 
 しばらく検討をしてみたが機能要件では条件に一致する製品がない状況であり、要件の一部を諦める必要がある。やはり条件を厳しくしているのは光学ファインダと単三駆動の2つで、これが無ければ現行機種の大部分が選択肢に収まってくる。ならばモードダイヤル付き・GPS付きで考えてみるか。
 この場合でもやはりブランドはPowershotで、A570ISのリプレースとしてならSX260HS、S110となる。
 SX260HSは筐体がやや大きめ、センササイズが1/2.3型の高画素機で、1ピクセルあたりの集光面積が小さく画質は期待できないし、実際にWEB上の評価もだいたいその予測に沿ったものばかりである。
Canon デジタルカメラ PowerShot SX260HS 光学20倍ズーム GPS機能 PSSX260HS

Canon デジタルカメラ PowerShot SX260HS 光学20倍ズーム GPS機能 PSSX260HS

 一方のS110は筐体サイズで言えばIXYブランドで出ても不思議ではないコンパクトさだが、センササイズが1/1.7型と比較的大型で1,210万画素と無理がない。WEB上の評価でも画質重視のユーザから好評価を受けていて期待が高い。 ならばS110で決定か…と、あと少しで購入決定しようというところで、S110にはGPS機能がないことに気がついた。正確にはiPhoneもしくはAndroidスマートフォンが持つGPSを専用アプリでロギングし、後で統合するようになっているらしい。どうやらWi-Fi通信機能を内蔵した結果、筐体内のスペースがなくGPSが排除されたようだ。しかしそんなエセGPS機能なんてカメラと別にGPSロガーを持って歩くのと何ら変わりない。
 何でこんな中途半端な機能を付けるのだろうと思ったが、コンパクトな筐体に無理にGPSと他機能を同居させるくらいなら、一緒に持ち歩いている可能性が高く、またアプリケーションソフトウェアでどうにでもコントロールできるスマートフォンの機能を借用するほうがよいという判断もありなのかと思い直した。なるほど、ただでさえ少ないバッテリも消費しないし(カメラのバッテリ充電環境は持ち歩けなくても、スマートフォンの充電環境は意外と多い)、GPSの運用面で見ても間歇起動で毎回コールドスタートを余儀なくされるカメラと違い、常に起動しているスマートフォンなら安定した位置情報を記録できるメリットもある。ただし、撮影後の後処理の手間がかかることには変わりない。m-241の運用で一番嫌気が差している点が改善しないのなら、S110の魅力は半減である。
 調べると前モデルのS100ではWi-Fi未対応である代わりにGPSは内蔵だった。 センサと画像処理エンジンに変更はない。GPS機能はやはりスタート時の衛星補足の遅さと消費電力の大きさが不評だったが、それは予備バッテリを多数用意すれば解決できる問題である。
 
 以上のような検討の結果、単三駆動機ではSX160ISかA1400、それ以外ならS100から選択することにした。
 帰国後の運用を考えると、別に写真が趣味ではない妻は殆ど使わなくなるだろう。逆に、自分のサブ機としてならS100が非常に魅力的に見える。普段は自分が使用し、必要に応じて妻に貸し出すのがよいだろう。あるいは、A1200かA1400の中古機を購入して渡してしまってもよい。
 というわけで、S100の購入を決定。ボディカラーはシルバーとブラックの2種類があり、ブラックは未だに30,000円超えだがシルバーは25,000円前後のため、シルバーを選択。中国製の安い使い捨て互換バッテリを2つ、64GBのSDXCカードも1枚購入。合計36,000円となった。