次期主力PC。

 さて。
 高い買い物だ。
 
 現在我がアパートで主PCであるThinkPad X60。モバイル用途に特化した小型機であり、このサイズと携帯性では高性能機だが、今のようにデスクトップ代替機として使用するにはいくつかの障害があった。
 この世代のPC共通の制限としてメモリは2GBまでしか搭載できない。Firefoxのタブを常時20〜30開きっぱなしにしていると、それだけでメモリスワップが発生しリンクを踏むだけで数十秒待たされることも少なくない。また画面は1024x768。デジカメ画像の現像処理には狭すぎる。さらに廃熱能力が不足しており夏場は温度上昇時の強制スタンバイのために連続使用が困難。就寝前に数百コマのRAW画像を現像指定しておくと、翌朝には処理が数コマ進んだ時点でスタンバイ中など珍しくない。
 またこの個体の問題として、スタンバイ復帰が二度に一度は失敗するという致命的な障害もあった。前オーナが筐体を落下させるなどかなり大きなダメージを与えたためにM/B上に微細なクラックでもあるのかもしれないが、中古機材でもありM/B交換など手間を掛けるのも惜しまれるところであった。
 今後の運用スタイルもあまり変わらないと想像されるため、新たにPCを購入しようと考えたのは先月頃の話である。
 とりあえずは要求仕様の検討である。実は職場でも50〜60台くらいの業務端末を調達すべく目下仕様書の作成中であるが、どうでもよい他人が使うものとは心血の注ぎ込み具合はおのずと異なってくる。
 X60で不満を感じている点とこの数年職場で選定してきた機種の反省点を考えると、要目ごとの要求は以下の通りとなった。
 
・筐体様式:
 ノートブック型であること
・OS:
 Windows7 x64 Professionalプリインストール
・CPU:
 intel Corei7(第三世代)、具体的には3720QM以上
・メモリ:
 最低でも8GB実装、並びに32GBまで拡張可能であること
GPU
 NVIDIA GeForce GT 650M以上
・モニタ:
 解像度1920x1090もしくは1920x1200、15.6インチ以上17インチ程度まで
・キーボード:
 ホームポジションと変換・無変換キーの正中線が一致しておりトラックポイント様のポイントデバイスを備えること
・ストレージ:
 光学ドライブバルク品で換装可能であること
 光学ドライブベイ以外にHDDを2発同時に装着できること
 本体のみでRAID構成が可能であること
・その他付属物
 WEBカメラ内蔵
 Bluetooth3.0または4.0内蔵
 USB3.0コネクタ2以上
 ドッキングベース装着可能であること
・保証
 最低3年間のメーカー修理保証、5年程度が望ましい
・価格
 ドッキングベース等最低限必要なオプションを含め、20〜30万円
・その他
 今後最低でも5年以上ストレスなく使用できる程度の処理速度と拡張性を備えること
 
 もはやノートブック型で検討するよりデスクトップにした方がよいと思われる内容となるが、今のアパート室内で自分が個人的に使えるスペースがそれを許さない。またドッキングベースがあれば、特にUSB端子の増設に有利となる。市販のUSBハブのほとんどはバスパワーのため給電に別途ACアダプタが必要となるが、ドッキングベースのUSB端子ではその必要がない。このためUSB2ポートでデータ通信と給電を必要とするHDDアダプタ等を同時に多数使用できる。
 この仕様を満たす機種を調べる。ノートPCでの条件はかなり厳しいが、ないわけではなかった。
 
Lenovo ThinkPad W530
・HP Pavilion dv7-7000
DELL Precision M6700
DELL Alienware M17x
 
 充足できるのはこの4機種となる。
 店頭で小売している機種もあるが今回はオプション等のカスタマイズが必須と考えられるため、各社WEBショップからの直販での購入とする。
 
 攻勢決心を行ったなら次のステップは具体的なオプション設定と価格の比較。
 価格で最も安価となるのはHP Pavilion dv7-7000。ただしキーボードに難有。トラックポイントがない上、カーソルの上下キー縦幅が他キーの半分しかなく、また日本語キーボードでは変換・無変換キーがホームポジションより左に偏っている。日本人が変換動作を行うなら親指での変換キー押下であるはずで、これが大きな難点。GDPNVIDIA GeForce GT 650M。
[rakuten:dejikura:10048392:detail]
 次に安価なのはThinkPad W530。これまで長くIBMThinkPadを使用してきた身からすると使用感に差異がないのはW530であるはずだが、ノートPCキーボード配列の傑作であるPC/ATフルキーボード配列に準拠した7列キボードは廃止され、他メーカ製と大して変わらない6列変則配列になってしまった。この点はブランドがLenovoに売却されて以降最大の改悪であり、またX60で使用していたウルトラベース等のオプションは互換性がないことから、機種として特に魅力を感じる部分はない。しいて言えば「純正のTrackPointを備えていること」と、一応従来と同様に小部品からでも個人向けに販売されており、自家修理が確実に行えることか。GDPNVIDIA Quadro K2000M。

 最初に詳細な性能を見たときから今回の本命と感じたDELL Precision M6700は、一応はノートブック型をしているものの実態はThinkPadで言えばかつてのGシリーズに相当する省スペースデスクトップPCである。巨体に任せて2.5インチHDDベイを2つ、mSATAスロットを1つ、これと別に3rdストレージベイに転用可能な光学ドライブベイを備えており、当然RAID構成も標準で可能。メモリクロックを1600Mhzに落とせば32GBまで増設可能なメモリスロットを備えており、GDPは標準構成のAMD FirePro M6000 Mobility ProからNVIDIA Quadro K4000M(4GB)もしくはK5000M(4GB)の選択が可能。液晶モニタはNVIDIA 3D対応の立体視モニタとAdobe RGB完全準拠の高品質パネルまで選択できる。
http://www.dell.com/jp/business/p/precision-m6700/pd.aspx?c=jp&cs=jpbsd1&l=ja&s=bsd&~ck=mn
 最後のDELL Alienware M17xはゲーム用途に極端に特化したキワモノで、特異な本体の意匠のため選択肢に挙げることすら躊躇われるが、ゲームソフトを遅滞なく動作させるためグラフィックを始め恐るべきハイスペックを誇る。面白い機能としてHDMI入力があり、液晶モニタを外部のコンシューマゲーム機等で使用できる。ただし指紋認証トラックポイントなど普段使いで必要な機能はない。
http://www.dell.com/jp/p/alienware-m17x-r4/pd.aspx?
 
 上記の4機種の内、価格・性能比が優れていたのはdv7-7000とW530だったが、メモリ上限がそれぞれ8GB・16GBまでと不足がち。
 WindowsXPで例えれば発売当時の平均的なハードウェアがメモリ512MB程度で十分とされていたものがその後のサービスパックリリースやオプションハードウェア用ドライバ・常駐アプリけーション等で徐々にメモリが圧迫され、最終的に上限の2GBまで搭載しても不足を感じるようになっている。職場で導入を始めて2年目に入ったWindows7環境では4GB搭載機でもメモリ不足によるレスポンス低下の報告もあり、上限8GBは論外、16GBでも早晩不足となる恐れがある。
 また、モニタサイズについてはW530は15.6インチ止まりのため、最初から持ち歩く状況を考慮していない今回の選定では不足と言える。他機種の17インチモニタはW530と同じフルHDの1920x1090に過ぎずサイズが大きいからと言ってすぐ視認性不良には繋がらないが、17インチ相当の筐体であればコネクタ実装数や拡張性にも有利ではある。
 dv7-7000は選択可能な最も高性能なオプションにしても20万円に届かず圧倒的な安価であり、W530はこれまでのThinkPadの運用経験から信頼性が高いところであるが、残念ながら選択肢から外す。
 残るDELL製の2機種については、選択可能な中から必要なオプションを追加するとどちらも30万円を大きく超える高価なもの。そんな中でもAlienware M17xは家庭用ノートPCとしては圧倒的な多機能・高性能を誇るのだが、残念なことにトラックポイント指紋認証がない。日本語キーボードの変換・無変換キーの配置が若干不都合なことも使いにくさを予感させる。一方でPrecision M6700は今回挙げた機能の全てを備えており、キー配置も特殊キー以外は従来のThinkPadと類似しており日本語入力にも不安はない。この巨体にも関わらずさらにコネクタの拡張が可能なPrecisionシリーズ対応のドッキングベースが用意されている。
 DELLは職場での運用経験から見て製品の信頼性は著しく低い難点がある。VOSTRO1510・1520のキーボードケーブルの組み付け不良やM/B上各コネクタの強度不足、VOSTRO1000のACアダプタでの停電時の復帰不良など細かい問題は挙げるときりがないのだが、保証期間を5年に拡張して予備機で対応(個人的には今回の新PC購入で余剰となるThinkPad X20など何台か予備機がある)すればよい。
 以上のことから、今回はM6700の購入に決定。