偶然か。

 俺がF氏といろは関連イベントでうろうろしている中、研修で上京していた妻が帰ってきた。
 家事をおざなりにしていたのがバレてしまい帰宅した後に小一時間問い詰められたのだが、そこで適当にあしらっていたのが妻の怒りにJP-4あたりを注いだらしく、クッションで顔を殴られるハメに。
 普段なら簡単にかわせるはずなのに、加齢のせいか湯涌帰りの疲れか顔面でまともに受け止めてしまい、メガネのフレームが折れてしまった。
 さて…メガネフレーム折損の場合、断面が小さ過ぎて個人が買えるような接着剤では修理が難しい。プラ板で添え木をしてやれば強度的にはある程度改善できるのだが、今回折れたのは鼻あてのアームの根本だったので添え木も困難。
 これは買うしかなさそうだ。また壊れたメガネも念のため購入店で修理ができるか聞いてみるか。
 というわけで、再び県都へ向かうことに。

 ブリットを走らせている途中、先行車に何かが描かれているのを見つけた。

 ミクか…。ちょっとDQN臭いドレスアップだが。昔はDQNとヲタクは水と油だったが、最近はかなり被っているというか、DQN的自己中精神があればアニヲタアピールも平気だ、ということなのだろうか。
 追い抜きざまに見えた運転者はまったく温厚そうな人物であった。

 メガネ店に着いて品定め。
 最近は安いメガネが出回っていて買う分にはありがたいが、当然のごとくデザイン優先のため、レンズ径が小さいフレームばかりである。流行りのデザインといえば聞こえはいいが、何をかけても見栄えが良くなる顔でもない。車線変更で頭を振らないと左右の確認もできないような小さなレンズでは困るのだが…。
 探していると、レンズが大きいジャンルのフレームに、今のメガネとデザインがあまり変わらずレンズ径もほぼ同じものが見つかった。しかも面白いことにフレームに磁石で遮光フィルタを取り付けできて、遮光フィルタ込で20,000円以下。もちろんこれに決定。
 あいにくとレンズの在庫がなく、納品は来週末になるとのこと。来週土曜日には職場の親睦会によるスポーツ大会があるので、それまでに間に合えばいいが。
 壊れた方のメガネは修理を受付できるが、新しいメガネができるまではどうにか使わなければならない。しばらくの辛抱…ということで、今日のところは持ち帰り、かなりみっともないがセロハンテープで補修しそのまま使用することに。

 妻は夜まで買い物に行くというので、俺はF氏に連絡して落ち合う。先日F氏と会った際に、お土産として幾つかデータを渡してくれた。その際にUSBメモリを借りたままだったので、それを返すためだ。
 妻は一緒に食事でもどうかと提案していたが、F氏が遠慮。それどころか、逆に謎のぬいぐるみをプレゼントしてくれた。

 この男…一体何を考えている…。
 妻は確かに初音ミクの存在は知っているが、別に自分で作曲しているわけでもないしその正体が実はソフトウェアパッケージの絵柄に過ぎないということも知らない。単に最近見聞きするヲタクキーワードという認識のはずだ。
 そんなところへどんな顔で持って帰れというのだ君。
 とりあえずラゲージに隠しておくか…。
 
 F氏と別れて妻と合流。買い物した荷物をブリットに積み込もうと妻がまっさきにラゲージのドアを開けてしまった。
 『…何なのコレ。まさか買ってきたんじゃないでしょうね』
 「いいえ、F君がプレゼントだって言ってくれました」
 『ああ、F君。…やっぱりねぇ…』
 F氏は既に妻の脳内ではヲタに識別されているので、その説明に全く異論が挟まれることはなかった。
 
 その後遅い夕食に向かい、県庁近くのとある店へ。
 ブリットを停めてふと隣の車を見た。

 何なの。今日はミクに絡まれてるのですか。