PS/55noteの。

 今日の衝撃は最後にやってきた。
 義妹夫婦宅への帰路、郊外のHARD OFFに半年振りに立ち寄った。
 新品のコーナーにあったCoregaのUSBデバイスサーバ。プリントサーバとデバイスサーバ機能を併せ持っている珍しい機種で、もしかすると一般的なプリントサーバが使えないことで有名なPM-A750をネットワーク化できるかも知れないと思い購入。4,650円。
 さらにジャンクコーナーへ。懐かしいPanasonicMSX2+、FS-A1WSXが転がっていた。高校生の頃バイトして買った最後のMSX。これでMSX専用ネットワーク「LINKS」に接続したり自作したグラフィックツールで描いたイラストをカラープリンタで印刷したりといろんな事をやったもんだ。実家にまだ稼動機があるが、予備のために買うか…どうか迷い、今回は見送り。どうせFDDの駆動ベルトは交換しなければならないはずだ。4,000円。
 そういえばアパートに設置しているデスクトップPCのキーボードをPS/2からマウスも接続できるHUB付きのUSBタイプに換えようと思っていたのだった。…というわけでジャンクキーボードの山からNECのUSBキーボードを発掘。500円。
 そのまま他に何か面白いものはないかとジャンクコーナーを回る事3周ほど。
 あるジャンクコンテナに何度目かに手を突っ込んでひっくり返していると奇妙な基板を見つけた。形からして何らかの拡張基板らしい。幅はPCMCIAくらいだが厚みはPCIボードほど、インタフェースは独自のもののように見える。
 一瞬、脳裏を何かが掠めたような気がした。
 これは…間違いない。PC/55note(5523-S)の純正オプション、内蔵FAX/MODEMボードだ…!。
(今手持ちの画像がないので、よそ様から画像をお借りします http://www.geocities.jp/siliconvalley1968/55modem.jpg

 PS/55note(5523-SJ4)。IBMが放った、初の正規DOS/V用ノートPC。(正規、というのはそれ以前に互換機として東芝よりDynabookが登場していたので)そして俺が本格的にPCの世界に踏み出した最初の愛機。CPUはi386SXのクロック12MHz。LCDモニタはもちろんモノクロ16階調、RAMは最大でも6MBだが40MBのHDDを内蔵しており、当時としては全く十分すぎるほどの高性能機だった。

 できることは当時も今も変わらない。画面を見ながらアプリケーションにキーボードとマウスでデータを入力し、プリンタに出力する。ただアプリケーションもマウスもプリンタも今と比較にならないほど高価で、とても発売直後に買えるものではなかった。まともに買うことが出来たのはPS/55note本体とマウスくらいなもので、OSとなるIBM-DOSは標準添付品からのアップグレードだけ、プリンタは本体から遅れること4年でようやくバイトの給料が追いつきEPSON初のインクジェットプリンタMJ-1000を買えたような有様だった。
 なお、この頃は先に書いたとおりMSXからLINKSへ専用モデムで接続していたので、その他のパソコン(ちゃんとコンピュータと書くべきか…当時は専門家や専門誌でも「PC」ではなく「パソコン」だった)で一般的だったNIFTY-ServeやASCII-netへPS/55noteから接続することはなかった。というよりも接続に必須のオプションである内蔵FAX/MODEMボードが高価すぎて全く手が出なかったのだ。MSXにももちろんLINKS以外のネットワークに接続するための汎用性のあるモデムが販売されていたがこちらもMSX本体以上の価格であり、バイトで生計を立てる学生だった自分に買えるようなものではなかった。
 当時、不十分な環境を工夫して使い満足しながらも、横目で見ながら歯がゆさを感じていた高価な部品が今こうして粗末なビニールに包まれて自分の手のひらに乗っている。もう黄ばんだ値札には「300円」と印刷されていた。
 もちろん、購入。
 ダイヤルアップ先のBBSはインターネット解放後に絶滅したし、仮にダイヤルアップ接続できるアクセスポイントがあったとしても2,400ボーで通信できるサーバなどあるわけもない。それ以前にPS/55noteはハードウェア構成の変更を行うには専用のリファレンスディスケットが必要になるが、実家に残してあるか記憶が定かでない。
 これは明らかに懐古趣味か。