Evernoteの驚異。

 大昔から、持ち歩くデバイスで自分自身の入出力全てを記録しておけないかという野望があった。
 使った金、食べた物、自分が発した言葉、耳にした他人の言葉、そういった俺という人間のI/O全てを記録したいという欲望。
 一番原始的な手段が日記だろう。中学生の頃、人生初のパソコンMSXに当時高価だったFDDを取り付けてから最初に使い始めた実用アプリケーションがMSXマガジンにサンプルとして掲載されていた「一行日記」だった。漢字ROMがないMSX用だったため全て「かな」で記述する代物だったが使用PCがWindows3.1Jに移行するまで長年重宝した。途中、MSX2+に買い換えた際に、データを全角かなに変換するプログラムを自作して延命を図った記憶がある。
 後年その後継となったのがWin3.1Jで動作するフリーウェアの日記帳ソフトウェアで、これは機能がシンプルで動作が軽快だったためプライベートだけでなく仕事上の日誌代わりにも愛用することになった。この業務日誌は先の勤務先の総合病院でも自分自身の業務を9年分記録したが、目の前で繰り広げられる上司・先輩達の人間関係をも記録してしまったために後任者への引き継ぎ資料には使うことができなかった。現在の職場でもUSBメモリに導入して極々最近まで使用していたが、WindowsXP SP3環境にアップデートを繰り返しているうちにWin16アプリケーションが動作しなくなってしまったため、残念ながら運用終了となった。
 IS02を持ち歩くようになって、VisualBasic5.0のアドオンを利用してWindowsCE用の類似日記アプリケーションを作ったりしてみたが、作成した日記データは結局はIS02に保存するしかない。職場の貸与PCにも自宅PCにもメールやストレージ交換であえて同期動作を行わない限りは、あまり実用性があるものとは言いがたい。(USBメモリよりも機動性が落ちた感すらあった)
 代替手段としてブラウザから編集できるブログを使用することを考えていたが、どうしてもテキスト主体となることと、これまでの日記アプリケーションに比較すると取り回しがかなり不便になるので移行には躊躇してしまう。そう言いながらも、後日の記録として主な作業内容を書いてはいるのだが…。
 
 ある日IS02上のOperaMobileで何となくWEB上をさまよっていると、ふと「Evernote」なるキーワードを目にした。
 どうやらWEB上に登録した自分専用のポータルサイトに、オンラインでデータを格納できる無料サービスらしい。PC上ではブラウザベースで、WindowsMobile上では専用アプリケーションでサービスを利用できるのだそうだ。
 ブログやオンラインストレージと同じじゃないのか。そうぼんやりと考えながら試しに公式サイトをブックマークに入れて1ヶ月以上放置していた。
 
 今日になって、ブックマークを整理している時に公式サイトを思い出して、PCとのデータ交換にでも使えるならとIS02にアプリケーションを導入して、アカウントを作成して試用してみた。
 すごい、これはすごいEvernote!。ただのオンラインストレージではなかった!。
 Evernoteではテキストだけでなく画像・音声なども記録できるが、それら全てで作成と保存がシームレスで実行される。例えばブログだったら文章を作成する作業と、保存して公開する作業は別だ。画像を付けたければ、アプリケーションで画像を作成するか、デジカメで撮影したコマをブログ向けに加工・保存し、WEB上のブログサービスにアップロードしてブログに記述し公開するという複数の作業手順を踏まなければならない。Evernoteなら、テキストを記録したければテキストモードを選んで書き付ければ、ローカルでの保存もオンラインへのアップロードも自動的に完了する。画像も同じで、IS02上ではデジカメが起動し、撮影したコマがEvernoteアプリケーションに渡され勝手にアップロード完了だし、音声録音も全く同様。タッチパネルからの手書き入力イメージまでも同様に記録できる。
 当然、これら記録データはIS02で再生できるだけでなく、PCからWEBベースで接続、閲覧することも、IS02上と全く同様にデータを記録していくこともできる。PC上でのインタフェースも分かりやすくできており、どのモードで作成したデータもサムネイルイメージ化されており必要なデータを直感的に選択できる。
 つまり、自宅のPC前であろうが外出先であろうが、いずれかのデバイスさえ操作できれば記録したいことはいつでも全て記録可能になるということだ。
 個人用のストレージ容量が40MB/月と最近のWEBサービスとしては非常に少なめで、500MBまでの拡張は$5の有償サービスを購入する必要がある。それでも少ない気はするが…。
 容量の少なさは否めないが、サービスの使い勝手自体は極めてよい。3日間連続稼動が可能になったIS02の真価が発揮できる最強のサービスなのでは…。