式場への祝電。

 今年、当課の親睦会の幹事に指名されてしまった。
 幹事の仕事は手が回らなくなって大変な失敗をしそうなのでもし事前に指名されれば固辞するつもりだったのに、前幹事は何と課員全員での選挙で逃げ道を塞ぎやがった。
 こういうのは学級委員選挙と同じで不正投票に決まっているというのに…。
 副幹事は2名まで自由に指名して良いとのことで、課内でも特にマメな性格で知られる若手Z君と、ウチの係のI君の2名を指名した。
 さっそくZ君から、Z君の係のボスMさんのご子息が近々結婚式を挙げるとの情報がもたらされた。親睦会から規約に従ってお祝いを行うべく、自宅に清酒を送り、式の数日前にはご祝儀を手渡しする準備を整えた。
 規約には式場への祝電についても定められているが、Mさんは子息の結婚の話そのものをまだ課内の誰にも話していないということで会場がどこになるのかは誰も知らなかった。Z君に継続して情報収集を頼んだが一向に分からない。
 やむなく、式の前日に早退しようとしていたMさんを追いかけ、ご祝儀をお渡ししながら会場がどこなのか恐る恐る尋ねると、テレビCMも数多い県内でも結構有名な式場だと言われる。
 住所を調べてNTTへ電報を送る手続きを済ませて、それから数日はそのことをすっかり忘れていた。
 式も終わったはずの一昨日。夜、終業後の職場に一本の外線電話がかかってきた。「結婚式場○○でございますが、親睦会名義でM様宛の祝電を送られた件でお話が…」と来た。
 偶然電話をとったのが自分でよかった。ロクでもない話に決まっているではないか。しかし目の前には当のMさんが残業中。そのまま話ができるわけもなく、電話を折り返すと伝えて無理やり電話を切り、そのまま別室へ走って改めて話を聞いてみた。
 何とその式場ではMさんの子息の結婚式など挙げられていないというではないか。
 日付を間違えたか?。いや、Mさんは前日になってようやく課長に予定を伝えていたのでこれは間違いない。式場名を聞き違えたか?。それも考えにくい。チャペル式・神前式それぞれの会場名を2つ合わせた珍しい式場名で、聞き間違えは「特に少ない」(電話の人談)らしい。
 電報を送り返すと言ってきたので、よもや職場に送ってもらうわけにはいかず、自分のアパート宛に返送してもらうことにした。副幹事と善後策を協議したが「うっかり会場を聞き間違いまして、宛先間違いで帰ってきてしまったので、今さらですがお渡ししますww」と、笑い話でごまかしながら手渡すしかなかろうと決まる。
 しょっぱなからこれかよオイ。何か先が思い遣られる…。