外見…?。

 SD14はデジカメとして造り込まれているとは言えない。特に撮影バッファが余りに少なく、さらにCFへの書き込みが非常に遅い。高速CFを使っても、AEBで3点バーストすれば次のコマが撮影可能になるまで1分近く待たされてしまう。
 当然、その間の私はレリーズスイッチを握ったまま三脚の脇にぼんやりと立ちすくんでいるしかないのだ。
 
 撮影を始めてしばらくすると、遠くからこちらへ歩いてくる何人かの人影に気が付いた。
 多分向こうも水銀灯の光の真下で何か怪しい奴が立っているのをすぐ見つけたのだろう、談笑していたのがピタっと止んだ。
 近くの歓楽街に向かう途中と思われるその中年男性数人は、自分の側を通り過ぎる際「こいつ、こんなところで何してんの?」といった顔でこちらを窺っていった。私は私で、いや別に何も怪しくなんかありません写真撮ってるだけなんですよヘヘヘとばかりにカメラを操作したいところだが、低速度シャッターで露光中なので手を触れるわけにも行かず、結局彼らが遠く視界の向こうに立ち去るまで突っ立っているだけであった。
 ………そんなにアヤしいか?自分?
 仕事帰りなんで普通にスーツ着てネクタイしてるし、別に何がどうということもないはずだ。…こんな何もない路上に立っているという事を除けばな。
 あれか?服装とかじゃなくて、顔か?顔面偏差値が低過ぎるのが問題だというのか?顔面偏差値が低くて身体もひょろいのが気に入らないのか?それはどうしようもないだろうが!。
 じゃ一人でやってるのが目立つのか?グループでやってりゃいいのか?何人かでわいわい撮ってるのは楽しいかもしらんが、夜撮って歩きなんてできないだろ…。
 よく考えてみれば、私の場合特に一眼レフを持って写真を撮る時は間違いなく一人だ。友達に同じように一眼レフを持っている奴は非常に少ないし、一緒に撮りに出かける事はほとんどない。ヲタが多い我が友人達の中では、カメラを始めたのは実は私が最後発で、他の連中は学生の頃にフィルムの一眼レフでマイブームを済ませてしまっているのだ。
 今をさかのぼること5年前。人生初の自分用一眼レフ初代KissDを買いに行った時、一緒に行った中学時代からの友人F君は私に向かってこう言った。「俺も昔は撮りたい撮りたいって思って毎日我慢ならんかったがなぁ…」と。つまり、彼的にはカメラは飽きたという事だ。彼は高校ではカメラ部に所属していたし腕もセンスも私より遥かに上なのに。
 私はF君が当時愛車の中に無造作に転がしていたNIKONのフィルム一眼レフの高級品「F4」がうらやましくて仕方なかったし、当時自分が持っていたコンデジFinePix2900ZではとてもF君とF4の組み合わせのような写真が撮れなかったからKissDを買ったも同然だったので、彼の発言になんだか登ったはしごを外されたようなモヤモヤ感を覚えたものだ。
 その後、KissDを買った私を見てN氏の他数人もデジカメを購入したが、みんなほぼ全てコンデジであって、ドライブに出かけた先で見つけたおかしな物体を車中からフルオートで撮ったり記念写真を撮ってみたりとカジュアルな使い方が主体で、ことカメラに関してはあまり話が合わなくてつまらない。
 これは困った。気軽に写真を撮りに行こうという話にはならないのだ。気軽さで言えばそっちの方が遥かに気軽なのに、決して写真撮影を主にしたりしないのだ。撮るために出かけるのではない。遊びに出かけて興が乗れば撮ることもある。そういうことだ。こういう人々は撮る時の自分自身がどういう風に見られているのか意識しなくてもいい。私と問題を共有できないのだ。
 うーん。どう解決すればいいのだろうか。しばらく考えているとふと思いついた。
 一眼レフ持った連中が集まって写真を撮っているところを見て参考にすればいいじゃないか。きっとイイトコ取りした素晴らしい撮影スタイルが見つかるに違いない!。
 できれば職業カメラマンじゃないほうがいい。うちの親父が参加しているキヤノンクラブはダメだ。平均年齢が高すぎて比較にならない。他に何か…。ビコーン!。
 コミケだ。コミケがあるじゃないか。コミケのコスプレ会場は「一眼レフ持った連中が集まって写真を撮っているところ」の最たるものではないか。
 Googleで検索するとすぐヒットした。早速撮影者側の様子を見てみる…。
http://www.google.co.jp/search?q=%E4%B8%80%E7%9C%BC%E3%83%AC%E3%83%95+%E6%92%AE%E5%BD%B1+%E9%9B%86%E5%9B%A3+%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%82%B1&lr=lang_ja&ie=utf-8&oe=utf-8&aq=t&rls=org.mozilla:ja:official&client=firefox-a
 …ああ、ダメだ。普段の俺と変わらない。これはコミケ会場だから違和感がないのであって、会場から一歩外へ出れば通用しない。 
 俺はヲタクじゃないんですよ。ええ。怪しくないんですから。ねぇ。