何も知らずに。

 土曜日。
 俺は持病の消化器疾患で投与されている治療薬の薬効がちょうど切れる頃で倦怠感が続いており、週明けの月曜には通院する予定だったため眠って過ごすつもりだった。
 しかし妻が急にどうしても外出したいと言い出した。
 ここしばらくの間、俺が自分の趣味で頻繁に外出していたことが気に入らなかったのか。俺がそうしているように、自分が行きたいと思ったところへいつでも自由に出かければいいじゃないか。
 しかし、今回妻は車で遠出したいようで、独りで長距離を運転するのは危険なので同行してほしいという。
 病人を連れてどこへ行こうというのか…。

 行き先をあまり明確に定めず出発することとなった。どこまで走るのかも不明確だったが、ヘタに1,000km単位で走ることになると長距離走行により向いたブリットの方がいいだろうと考え、俺が車を出すことにした。
 出発したのはいつものように夕方近くだった。
 
 走行中に妻が行き先を考えていた。俺ならどこか大都市圏へ向かうところだが、どこか山奥の鄙びた神社仏閣を見物する気らしい。しばらくスマホを眺めていた妻は長野へ向かうと宣言し、俺と運転を交代した。
 もちろん行き着く前に陽は落ち、止む無く経路上にある上越妙高駅前のアパホテルに宿泊することになった。オンライン予約の時点でシングル2室しか空いていなかったが、ホテルに着いてみるとホテルのかなり広い駐車場が満杯で、近くの有料駐車場に停めざるを得なかった。新潟ナンバーの車もあるが、山口や千葉など他県からも多数の宿泊客がいるようだ。
 例によってGOTOキャンペーンのため宿泊料はアホみたいに安かった。
 建ったばかりの駅舎は立派だが終電後は全く人気がなく、その周辺はスッカスカの暗闇が広がっており、遅い夕食どころか軽食が取れる店も見当たらない。
 たった一軒、小さな商業ビルに魚民があるのを発見しそこで食事をした。
 f:id:gungunmeteo:20201004004725j:plainf:id:gungunmeteo:20201004004621j:plainf:id:gungunmeteo:20201004003615j:plain
 明日どんな目に遭うかも知らない俺は、ほとんどアルコール分が入っていない甘いだけの安っぽいカクテルを飲んで悪酔いし、自分の部屋に戻って眠った。
 もうこの時点でクタクタだった。