ガンプラの撮影。

 終業直前、広報担当I君から電話が掛かった。
 「全く先入観だけで大変失礼なんですが、Gungunmeteo係長ってガンプラ持ってたりしませんか」
 質問の前半部分を耳にして、ブリットのラゲージルームに入ったままのプライズフィギュアの話でも出されて強請られるのかと思ったが全く別の話で安心した。
 「あるな…25年前に作ったνガンダムが最新だけど」
 「たくさんありますか」
 「何に使うんだよそんなもん」
 「広報記事でガンプラの集合写真が必要なんです。なんで貸していただくか代わりに写真撮ってもらうか」
 ガンプラが趣味の小学生の記事を書いたが、何の手違いかその肝心のガンプラの写真が準備できなかったので代わりを探しあぐねていたところ、I君の後輩のS君か俺のどちらかは「確実に持っている」と衆目が一致したのだという。
 何を持ってその2人が確実視されたのか理由を知りたいところであるが。
 
 仕事帰りに実家に立ち寄りかつての自分の部屋にプラモを探しに行ってみると、半ば予想通りであるがとうの昔に片付けが終わり、プラモのコレクションも多数の収納箱ごとなくなっていた。それだけでなくかつての主PCや膨大なメディア等が一掃され、書架もすっかり空になっており、長年集めたハヤカワSF文庫やガンダム関連の小説などもどこへ行ったか見当たらなくなっていた。恐ろしいのはMSX関連の本体や周辺機器、ソフトウェアパッケージも見当たらない。
 母親に念のため行き先を訪ねたが、父がすっかり捨てたはずだとの返事であった。
 
 I君にはS君を頼るよう伝えることにして帰ろうとしたが、農機具置き場になっている納屋を念のため調べに行ってみると廃材の山の中に見覚えのある段ボール箱が一つだけ埋まっていた。開けると中には1/100スケールの初代νガンダム他わずかな完成品が収められていた。直ちに箱ごと回収する。
 廃材の下敷きになっていたものの中には小説版Zガンダムのカバーの断片などもあったが、残念ながら他に形をとどめているものは見当たらなかった。
 出た家なのだから文句は言えない。諦めがつくうちに忘れるべきか。
 
 アパートに戻ってキットを撮影。ガンプラであることが分かればいいんです、とのI君のリクエストだったのであまり手間は掛けたくない。
 以前プライズフィギュアの撮影に用いたダンボールを適当に積み上げなおし、また適当な背景布を貼って即席の撮影テーブルを作った。カメラは寝室に置きっ放しだったSD1mを使用。照明も室内の蛍光灯だけ。
 Jpeg撮って出しを送るつもりだったが、流石に色調が不自然なのでX3Fから現像して微調整。
 
 しかし。
 今時の小学生が作るガンプラって…絶対俺が用意出来たものとは違うと思うんだが。