ブレーカーが落ちた。

 電子カルテが停止した。
 幸いにして週の中でも患者数は少ない曜日だったが、それでも復旧までに要した1時間の間に外来で起きた混乱は大変なものだった。
 オーダリングシステムが失われた場合の旧来の紙伝票運用への移行の判断と院内全体への周知など、事前のシミュレーション通りにはいかない事項がいくつもあったが、それらの問題点は手順の再点検や、システム停止を災害の一事象と見なして院内で訓練を積み重ねて改善していけばいい。
 俺も昔と違って自分が対処に歩くのではなく対処の指揮を執る側に回らなければならなかったが、気が付けばY君やI君と同じように復旧作業を行おうとしてしまっていた。
 そもそも停止した原因は、病院建屋の中で行われていた設備工事中、設計図どおりに配線されていなかった商用電源のケーブルが壁面加工の際に掘削機具に触れて損傷し漏電したためブレーカーが落ち、そのブレーカーの配下にサーバ室電源が入っていたためだった。
 誰に文句を言えばいいのだろう。建設に携わった設計事務所か、建築工事の際の施工業者か、今回破損させた業者か。