父親の5D2。

 先日県都ハードオフをうろついている時にEOS用のバッテリグリップが中古で置かれているのを見つけた。ジャンクではなく箱から全て揃っているが、新品価格の半額だった。反射的に手に取ってなぜか初代KissDのバッテリグリップだと勘違いして買ってしまったのだが、後で調べると5D2用だった。
 改めて売りに行くかとも思ったが、そういえば父親が5D2ユーザではないか。
 クソ息子からクソ親父へ一生に一度のプレゼントだ…。
 
 ところが父親に取り付けさせてみると、電池室側ではボディに密着できず向こうが透けて見えるほどの隙間が開いてしまう。とても防塵防滴とは言えない。製造不良だったから安かったのか、それとも中華の偽物か?。隙間はウレタンシートを切って貼ればどうにでもごまかせるレベルだが…。
 動作自体は全てのボタンを含めて正常だった。父親は防塵防滴を気にするような撮影はあまりしないはず(朝夕田んぼに潜んでトキを撮影するのは該当するのだろうか)なので、そのままにしておく。
 バッテリグリップの電池室は俺の6DやKissDX用と違って専用バッテリにはマガジンがなく、背面からバッテリを直接挿入する方式だった。開口部が大きくなるから強度的に弱くなりそうだが、マガジンいらずは便利そうだ。(単3形乾電池を使用する場合は同梱の専用マガジンが必要になる)
 また不思議なことにバッテリを一つしか持っていなかった。IS付きの望遠レンズで長時間野鳥を撮るのだからバッテリはいくつあっても足りないくらいだと思うのだが、今までどうしていたのだろうか。バッテリグリップを付けて電池室が半分開いているのも情けなく、俺の予備電池を一つ譲る。こちらは堂々の中国製で別に惜しくはない。
 
 父親に貸したままだったSIGMA 50-500mm F4-6.3 APO HSMを返された。久しぶりに手に取ってみると、ズームリングが重いどころか引っかかって回らなくなっていた。このレンズは俺が持っているレンズの中ではもう既にかなり古いと言える代物だが、数年前にAF時にインナーフォーカスリングが途中で引っかかることが頻発して2度修理に出しており、最後に出した昨年はメーカーから保守部品の保有期限切れのため修理不能として返却されたものだ。
 どうも父親は自分で新しい望遠レンズを買ったらしく50-500mmは不要らしいが、俺が使う気がないならもらうと言って再び引っ込めてしまった。
 父親は回らないズームリングをガリガリ言わせながら無理やり回していたが、自重でレンズが伸びるのを防ぐズームロックスイッチが全く効かなくなっていることに気が付いたらしい。
 そこで俺もはたと気が付いたことがあり、父親から50-500mmを取り返すとズームロックスイッチを鏡筒から取り外してみた。スイッチ周辺の0.8mm径程度のネジ2本を抜くと、案の定(と言っても、中で何が起きているかは分からなかったが)、スイッチのスライダの裏側にあったと思われる金属製の部品が外れて、鏡筒内に噛みこんでいた。

 この部品は前玉側の鏡筒の切掛けに引っ掛ける形でズームリングを固定する内部側の爪となるものだ。
 ズームリングを静かに回しながら噛み込みをゆるめて、どうにか金属部品を取り出すことに成功。スイッチ側とどのように組み合わさるのが正しいのかじっくり観察してみた。どうもスイッチ側とは鏡筒上でスイッチにクリック感を与える薄い板バネを挟んで極小のネジ2本で固定されていたらしい。
 いずれの部品にも同じ位置に2つのネジ穴が開けられていたが、肝心のネジは見当たらない。どうも2本とも鏡筒内に脱落してしまったようだ。レンズを振ったりしたが特に中で異物が転がるような音は聞こえない。
 もしかすると、このネジが1本ずつ脱落してフォカースリングに噛みこんでAF障害の原因になっていたのではないだろうか。修理に出して受付された際には報告書には作業内容の説明はなく単にAF調整と記載されていたが…。まぁ、鏡筒を分解するならこのズームロックスイッチを取り外す必要があるので、ネジ脱落に気が付かないということは考えにくいが、修理に出す前はAFの障害が再現しない場面も合ったことを思い出すと、あるいは工場でも気付かれずに調整だけで済まされていたのかも知れない…。
 改めて固定したいが同寸法のネジなどあるわけがない。各部品の接触面は5mm四方あったので、両面テープで貼りあわせてしまうことにした。やってみると上手く固定できて、ズームリングの固定も解除も問題なく操作できるようになった。
 この部品が噛み込んでから、父親が力任せにズームリングを回したのだろう。鏡筒内には引っかき傷が何本も付いていた。この金属粉は鏡筒内に多数落ちただろうから、そのうちレンズ内に目立つ塵が出てくると思われる。
 1本で10万円もしたのに、何て勿体無いことに…。