中古のレンズ。

 先日父親に持って行かれてしまったSIGMA 50-500mmの代替になるようなレンズを探してみた。
 この手の超高倍率ズームでは、現在SIGMATAMRONからそれぞれ150-600mmというもう少し望遠側に伸びた新型が出ている。SIGMAの方は現在発売されているのは新しい販売スキームでいうSPORTSラインに属していて、価格が20万円超え(通販での実売価格は17万円台が多いようだが)で、発売されると噂の普段使い向けのContemporaryラインの同じ焦点域のモデルを見てから考えるのがいいだろう。

 ただ広角側が150mmからとなると、別にプロでもなく多分アマチュアですらない自分のような者には使いにくい焦点域でもある。TAMRON 28-300mmのような便利なお散歩ズームレンズで一眼レフを使い始めたためだとは言わないが、できれば1本で色んな焦点域を撮影できるレンズの方がいいのだが。というと、多分Z君あたりに嗤われるのだろう。
 今でもあの50-500mmは入手できるのだろうかと何気なくヤフオクで商品検索してみた。同じ焦点域ではその後レンズコーティングがデジタル対応されたマイナーチェンジ版と、手ぶれ補正が内蔵された新型がリリースされている。
 初代は今から10年以上前、まだデジタル一眼レフが普及する以前の製品で、カメラメーカー純正品と比較して安価であったため惜しげも無く酷使されたものばかりだろうと勝手に予想しながらだったが、予想外の物を発見した。
 SAマウント用の玉だ。あの当時でSAマウント用のレンズを実際に買う人がいたというのが驚きだったが、入札価格を見ると1円スタートで現在は3万円。
 さて、今EOSとSDの2系統のカメラを持つ俺としては、レンズに投資するならEOS用のEFマウントへ重点的に行なっていくのがメーカーの事業継続性や後継製品への期待度からも得策だろう。
 一方でSDのSAマウント用には、SD14を購入した時のキットレンズである17-70mm F2.8-4.5DCとSD1Mを購入時のキットレンズ18-200mm F3.5-6.3II DCの2本だけだ。焦点域も重複しておりあまり使い分けできるような状態ではない。しかしここに500mmを追加できれば額面上はEOS側と同じ焦点域をカバーできる事になる。
 うーん。
 50-500mmは新品で購入した当時10万円少々だったと記憶している。それで中古だからもしEFマウント用なら出せても3万円台、あるいは最初から選択肢には入れない。しかし元々中古の玉数が少なすぎる貴重なSAマウント用という点を考えると、5万円台ならいいか…と、まぁ物欲が頭をもたげてきたのだった。正直なところ今の自分の使い方ではSAマウント用に新品のレンズを買う気にはなれないし、昨今の高性能化と高価格化したSIGMAレンズは俺にとっては豚に真珠である。
 それで5万円を上限と決めて入札してみたところ、ヤフオクでやはりSAマウントレンズを専門に集めている入札者と競り合いになってしまった。3万円台をあっという間に超えて4万円台に突入してしまい、このまま5万円に達してしまえばもし落札できたとしても後悔しかねないと不安になってきたところで相手が降りた。送料込みで46,000円で俺が落札。
 事前の評価どおりとても素晴らしい取引で、問題はレンズがこちらに届き、相手の評価を入力した今日になって発覚した。外箱・説明書に保管用ソフトケースなど主要な添付品は揃っていて梱包は個人業者の仕事としてはとても丁寧だったしレンズ内の異物混入やズームリングの動作やAFモータ駆動は正常だったのだが、取り外しできるはずの三脚座が鏡筒から外れなくなっていたのだ。
 調べると三脚座の固定リングと鏡筒の間に接着剤が塗られて固定されている様子だ。固定ネジを締めてもなお固定できない不良品だったので前オーナがやむなくやった…のだろうか?。
 出品者の商品情報を全て読みなおしてみたがこの件については記述がない。縦位置・横位置撮影の切り替えができないのは都合が悪いので、勿体無いが出品者に初期不良として返品が可能か照会メッセージを送った。
 中々いい買い物だったと思ったのだが、仕方ない…。
 
 出品者からの返事を待つ間に三脚座をさらに調べていくと、固着の原因となっているリング内の接着剤がまだ一部乾燥していないのに気が付いた。
 接着されてからまだ間がないとすれば、前オーナは出品者自身で、何かの事情で接着してみたが扱いに困って出品したのだろうか。とすると随分と酷い話だが…出品者はどう見てもカメラ機材を主要商材にした個人事業者で、個人利用の機材を出品しているようには思えない。
 返品せずにこのまま使用できればそれでいい。相手からの返事を待たずに商品に手を加えると返品交渉に影響がありそうでかなり躊躇したが、思い切って接着剤の除去をやってみることにした。
 三脚座リングを可能な限り開いて鏡筒との隙間を作った。やはりリングの開放端付近は接着剤が溶解したままで、わずかな隙間の中で伸びている。無水エタノールなど溶解させられそうなものを使いたいが、鏡筒側にはリングの挿入位置ガイドとなるネジなどの開口部があるはずなので迂闊に使うのは危険だ。面倒だが、リングや鏡筒に傷を付けないよう爪楊枝を隙間に挿しながらリング全周の固着を剥がしていく。
 最後に少し力を入れて鏡筒とリングをひねると、ヌルっと嫌な手応えで三脚座が外れた。簡単に書いたがえらい時間がかかっている。
 外れたリングの内側を見ると、接着剤ではなく元々存在する固着防止のナイロンシートの上に更に細く裁断された両面テープが貼られていたようだ。それがナイロンシートをリングに貼るのに使用されていた両面テープのはみ出した部分の糊と癒着して、きちんと鏡筒に張り付かずに隙間があいていたのだ。お陰で剥がす足がかりになったが、リング内も鏡筒も溶けた糊や両面テープが一周ぐるりと張り付いていて清掃が大変だ。
 またしばらく時間をかけて残留物を清掃した。リング側にはどうしても取りきれない糊の成分が残っていて、無水エタノールで拭いたがあまり効果はなかった。それでもこのままリングを締め直しても到着時のように固着することは当面なさそうである。
 これで出品者から返品対応するとの回答が返って来るなら、やはり返金を受けて返品してしまうべきだろうか。中古レンズとしては恐らくそれなりに動作するだろうが、出品情報にない不具合で変に手間をかける羽目になったことを考えると落札価格は割に合わない気もしてしまうが。