大和。

 港湾地区を少し走って目的の大和ミュージアムに辿り着いた。海上自衛隊の施設と民間の港湾施設の中にあるのかと思っていたが、そごうをはじめとした商業施設や呉駅の間近、本当に市街地の真ん中に建っている。一番目立つのは「てつのくじら館」、つまりあの潜水艦だろう。

 専用駐車場から歩道橋に上がると、かなりインパクトのある風景が広がっている。歩道橋はそのまま港湾地区を一望できる展望デッキも兼ねており、そこからははるか沖合いに停泊する2隻のおおすみ輸送艦や入渠したその他の艦艇も手に取るように見えた。その時持っていったのはキスデジXとSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DCで、おおすみ級をきちんと撮るにはテレ端200mmではやや足りなかった。艦籍番号はどうにか読み取れ、それによるとこの2隻は4002「しもきた」と4003「くにさき」。

 さて、ミュージアムに入館しようとするが大変な混雑。やはり連休だからのようで、館員も普段の週末はこんなに混み合わないんですが…と団体客に謝っている。
 ロビーを抜けると、そこには…。



 デカイ。やたらデカい大和が鎮座している。デカイだけではなく、精密さが尋常じゃなかった。男性諸氏なら当然のごとくタミヤのウォーターラインシリーズで大和か武蔵を作った事があるだろう(?)。あれくらいのキットのディティールが頭にあれば、目の前のこの大和の作り込みに驚愕するだろう。いや、むしろ艦船キットを作った事がない人は、一度体験してからいくべきだ。そうすれば凄さがより一層理解できる。
 ふと見回すと、周囲の見栄えがしそうな視界を取れる位置にはカメラを持った見学者の行列ができていた。頭にバンダナを締めた一般的イメージ…偏見とも言うか…とおりのミリヲタが団子になってキスデジなんぞ文字通りおもちゃにしか見えなくなるような一眼レフを構えている。私はそれを眺めて「痛いなぁw」などと笑って通り過ぎたりせず、きっちり後ろに並びました。
 館内には大和の計画・竣工から戦歴まで充実した資料の展示があって飽きる事がない。呉自体の歴史についても戦前の軍港としての黎明期から爆撃による被災、戦後の民需転換に至る歴史がかなり詳しく説明されている。ウチの県内で大手の精密機械メーカーの創業者が呉の工廠出身者だという事も、展示資料を読んでいて初めて知った。
 呉の工廠で製造された旧海軍艦艇の写真が壁一面に貼られていて、眺めていたのだがその中に面白いものがあった。「仮称第71号艦」と書かれた潜水艦の写真で、一見すると海上自衛隊の初代おやしお型そっくりな先進的なスタイルの艦体で、とても太平洋戦争の前に建造されたものとは思えない。ところが写真のキャプションには昭和13年竣工と書かれている。その場では、大戦後型のいずれかの潜水艦と写真を取り違えたのかと思っていたが、帰宅してから調べてみると本当に当時建造された潜水艦だった。
 別フロアには復元された零戦や回天、海龍など当時の日本陸海軍の装備品も展示されていた。興味深かったのは回天が積んでいた潜望鏡で、実際に展示フロアから窓越しに館外を見る事ができるようになっていた。実際に見てみたが、やや曇りが感じられたが60年以上前の戦時急造品とは思えないほど画質は抜けがよくて解像感が高かった。
 零戦は墜落機を、当該機の当時の操縦士の協力を得て復元したものということで、コックピットの中までかなり詳細に再現されていた(ただしコックピットは操縦士の記憶だよりだとの断り書きがあった)。見学の子供達も大勢いたが、やはり大和と並んで零戦が大きな目玉展示物のようで機体正面は子供らがほぼ占拠。ところでこの機体の外見は完全に光沢仕上げになっていたが、実際の機体はどうだったのだろうか?
 結構駆け足で見学したつもりだったのに、時計を見ると何と16時。隣の「てつのくじら館」を見学する時間がほとんどない!。細かい解説や展示品は後で見るつもりで飛ばしていたので、後ろ髪を引かれる思いでミュージアムを後にした。