TRON。

TRON

 TRON
 20年以上前の、コンピュータとソフトウェアの世界に飛び込んだ人間とソフトウェアの闘いをCGで描いた画期的な映画。
 小学生当時に観た時はあまりのカッコ良さに衝撃を受けた。人間が作ったプログラムが小さな相棒ビットを連れて電子の世界を走るイメージは自分の記憶に強烈に焼き付けられた。今のように映画館に足しげく通える環境ではなかったので観たのは後にも先にもその一度だけだったけれど、その数年後にMSXで初めてプログラミングを始めた時、自分の書いたプログラムが動き出すと脳内には当然のようにTRONの世界を妄想したものだ。
 あまり関係ないが大抵のBASICインタプリタには[TRON]コマンドがある。TRace ONの意味で、書いたプログラムを走らせた時に、今どの行のコマンドが実行されたのか分かるように行番号を画面にどんどん表示していくもので実際のプログラム作成では使うことはあまりないのだが、デバッグの途中で意味もなく使ってみたりしたし、実行中の見た目がパトレイバー劇場版のBABELウイルスと酷似していたので学校で友達のプログラムソースにそっと混ぜるなどいたずらに使えた。
 …あれから、何と28年。
 自分も実にオッサンになってしまい、趣味としてのプログラミングにも、仕事としてのソフトウェア開発にも、夢や希望なんかそんなになかったことを十二分に理解できるほど長い年月が流れてしまったのだ…。
 しかしそのTRONの続編が制作されたとなれば観ない訳にはいかない。
 昨日の午後遅くに県都へ出かけた。N氏が同行したものの彼はTRONには全く興味がなく、同時上映中のヤマトのチケットを購入。
 以前別の3D作品を観ていたN氏が3Dグラスを貸してくれたが入場してから裸眼用だったことに気付く。ジャケットを探ると書類を束ねるクリップが転がり出てきたので、これで3Dグラスと自分のメガネを挟んで固定。かなり不恰好だが暗い劇場の中ではどうということはない。
 肝心の内容はというと、前作よりも電子世界の無機質さ・冷たさの表現を全面に出した映像美とオーケストラ任せの映画音楽とは一線を画したDAFT PUNKのBGMが最高にいい!。
 クールなだけでなく、擬人化されたプログラムが集うEnd of Line Clubでオーナーのキャスターが見せるエキセントリックな演技も楽しい。よく見ると、このクラブのDJはあのフルフェイスメットをTRON仕様にしたDAFT PUNKの2人。
 3D映像は現実世界と電子世界を明示的に分ける境界としても使われていて、劇中の主要な舞台が電子世界であることを強調していた。
 前作を観た者ならニヤリとなるような面影を残すメカニックの数々と、さらなる続編を期待させるラスト。
 世界観の重厚さではMATRIXや攻殻機動隊に譲るかもしれないが、仮想現実へ夢と希望を残したTRONは前作・今作とも間違いなく名作だ。
 …。
 ところで、ビットはどこに?。