俺が止めを刺したのか。

 冷蔵庫が死亡した。
 昨日、頭痛と発熱で仕事を休んで終日死んだように眠っていたが、その間ずっと遠くから「ゴブォオオォオン」と、TRONのレコグナイザーの飛行音のような奇怪な唸りが聞こえてきていたような気がする。
 目が覚めた時には、その唸りは幻聴であったかのように部屋の中は静かだった。
 深夜になってようやく熱が下がり動けるようになったので、買い置きしていたDr.Pepperを飲もうと冷蔵庫を開けたとき、初めて異変に気がついた。
 庫内が常温になっている。
 フロントドアのインジケータを見るとエラーコードと共に温度異常が表示されていた。冷凍庫を開けたところ、庫内のアイスクリームや機材冷却用の保冷剤が全て解凍されており、熱交換器が全く動作していないのは明らかだった。
 コンプレッサの駆動音がしない。冷蔵庫用コンプレッサが故障したらまるで鍋を棍棒で殴りつけるような破裂音がするのを経験しているので、これは主たる故障の副次的な現象だろうか。ドアの液晶モニタは生きていて操作は受け付けるので電源の故障でもなさそうだ。
 あれこれ故障の原因に思いを巡らせ、早い話この場で修理できないかと考えた。今月始めに、ドアパッキンが劣化して隙間から湿気を含んだ空気が常に流入しているのを見つけて、バスルーム修繕用のシリコンボンドで補修したばかりだったのでこのまま捨てるのも惜しいと思われたのだ。
 しかしこの冷蔵庫は一人暮らしを始める時に既に10年落ちだった中古品をタダで譲ってもらったもので、本来は4〜5人の家族向けの巨大な機種でもあり、自分独りの生活ではあまりに使い勝手が悪いと感じていた。サイズ的にはもう一回り小さくても問題ないし、どのみちこのアパートに10年も住むのでなければ、撤去する際にも楽な機種を買い直した方がいいのかもしれない。
 今週木曜日が休みなので、候補機種の選定を開始する。