私が悪かったのか?

 ある課長補佐から、他課からの業務移管に関するシステム上の対応方法について問い合わせのTELが入った。
 私も噂は数ヶ月前に聞いていたのだが、課長補佐曰くそれぞれの課同士でまだ一度も協議されていないとのことだ。
 現時点で想定される問題について口頭で説明した。システムには機能別に利用権限の定義がされており、受領課側へ新たに利用権限を付与すればいいはずだ。特に問題になりそうなのは、移管する業務をサポートする業務システムで参照できるデータ範囲と、課別に定義してあるシステム利用権限の範囲が必ずしも一致しない点だった。主管課以外へ無用にデータを流す事は避けなければならない。
 そのあたりについても説明した上で、改修費用を要せず対応可能かどうかを調査したい旨と、こちらで権限範囲と許容範囲のずれについて資料を用意するので、それをもって近いうちに双方の課同士で協議してほしいという要望を伝えた。
 そこで電話は終り、私は自分の作業に戻った。
 そのわずか5分後に、また課長補佐からTEL。相手に話が通じないので来て欲しいとの事。
 行ってみると課長補佐が、相手の課の事情を知らない窓口職員を捕まえてほぼ一方的に言葉を投げている。あなたは課長補佐なのだから、当然ここの課長補佐に話すべきだと思うんだが…。運の悪い事に、その課のシステム運用を最も理解している主任は不在。最初は何とか話を聞いていた若手職員も筋違いに気付いてだんだんと不機嫌になってきた。
 こちらから資料を用意するまで待って欲しかったのに…。課長補佐も若手職員の態度に立腹しかけている。どうすりゃいいんだと困惑していると、頼みの主任が席へ戻ってきた。
 課長補佐も切っ先を主任に向けてまた喋り出す。素晴らしい事に、問題になる権限範囲のずれと対象のシステムが全て主任の頭に入っていて、散々騒いだ課長補佐も「ほら、彼に聞いたら何でも解決じゃないか」と一言言い残して去って行った。
 あっけに取られたのは残された私だが、一応主任にここに至るまでの経緯を説明した。主任はだいたい想像がついていたようで、主管課としての資料が揃った時点で、こちらから協議に行くつもりだったと聞かされた。
 どうも件の課長補佐は今朝の会議で業務移管のスケジュールを上から確認されて慌てたらしい。しかし、これでは主管課から見るとまるで私が課長補佐をけしかけたみたいじゃないか。
 それにしても、双方とも移管の話を知っていたならどうして課長補佐同士で事前協議をしていないのか…。業務担当者やシステム担当者といった現場の人間だけでこんな話が進むなら課長補佐なんていらないよ。