手の遅い人。

 シーズンだから忘年会というわけではないが、連日飲み会が続いていた。
 今週は毎日何かの飲み会に顔を出しており、体調を崩すのが怖いのでアルコールを遠慮する夜もあったが既にかなり疲労を感じていた。
 今日だけは特に予定がなかったので、終業後もZ君やD君とグダグダとお喋りしながら、そろそろ帰宅しようと立ち上がった時にZ君から一軒寄らないかと誘われた。
 昨夜の飲み会で出席者からD君について気になることを聞きつけていた。仕事にも関係する内容だったため、その辺りをZ君と話そうと思っていたところだ。
 
 いつもの店に行きいつものように飲む。
 昨夜聞いたD君の件とは、ある職場内活動に役員として参加しているD君が、その活動を中途半端にしてしまっていることだった。
 新たに着任したその活動の責任者が、昨夜開催された顔合わせ会の2次会の席上で開口一番D君を罷免すべきだと発言。前任の責任者も何ら否定せず同意し、同席していた俺はそのあまりの言われ様に愕然とした。
 元々D君は仕事でも手が早いとは言えないので、いくつも仕事を掛け持ちすることで問題が起きやすくなる恐れはあったと思う。実際、過去に一度別の役員をD君が務めた頃にも、やはり活動に支障を来して関係者内で問題になっていた。
 その当時も今回も、D君は指名されて参加したのであって自発的な参加ではなかったと聞いている。指名の際に断らなかったD君に何ら責がないとは言わないが、片手間になると分かっていて引き受けさせたのなら何某かの支援はあったのだろうか。
 Z君もD君の活動のペースが遅いことに同感だという。罷免されるより前に自ら辞任すべきとのこと。
 俺からそれとなく話せばいいか…?。