化学。

 今年の春前に風邪を引いたのがきっかけで、腸の持病がひどく悪化してしまった。
 内視鏡を含めて検査を繰り返し受けたが一部に狭窄も見つかった。これまでのような経口薬剤では狭窄を固定化したままになる危険があるとのことで、免疫抑制剤による化学療法をしばらく受けることになった。
 完治するような持病ではないのでそのうち一度は受けることになるとは思っていたが…。
 主治医の計画では開始時の1ヶ月は2週間おき、その後4週間、8週間と間隔を開けながら徐々に投与量を減らしていくことになっている。通院先は俺の勤務先病院とは別の病院で、通うだけでも往復3時間、免疫抑制剤の点滴に2時間は必要なので、その都度終日仕事を休むことになる。もちろん診断書をもらって病気休暇をとらないといけない。
 しばらく感染症リスクが大きくなるのが面倒だ。仕事柄マスクは外さないが、仕事上の患者との面談などは避けるよう上司から指示されてしまった。
 長期入院などして迷惑をかけるよりは幾分マシかもしれないが。

 というわけで今日初めて通院先の化学療法室で投薬を受けたのだが、部屋には抗癌剤治療中であったりその他同様の治療を受けている他の患者さんが何人もいて、俺自身は大したこともないのに自分もひどい重病人になったような気分になった。
 何より驚いたのは今回使用していく免疫抑制剤の費用で、1本30万円、健康保険を使っても8万円払わなければならない。難病特定疾病とされるものなので所定の手続きをとればもっと自己負担額は安くなるが、そうでなければ続けていく気にはならない。
 一定の収入がなければ、迂闊に病気にもなれない。