たまの出張。

 今日はボスと二人で県都へ出張。去年から色々とお世話になっているさる大学教授が関係するフォーラムに出席するためである。
 困ったことに今日は社用車での出張が多かったらしく、普通車はほとんど出払っていた。まぁ軽四でもいいかと思っていると、担当者からRV車があるからそれを使えとの指示。出張でRV車?。
 往路はボスが社用車のハンドルを握った。昔は某大手の自動車メーカーに勤務していた車ヲタクのボスは、今でも走りのメリハリがしっかりしている。言い換えればかなり怖い運転だ。ボスが普段乗り回しているスポーツタイプとは違うのだからもう少しそっと運転してほしい。今回は特に車高の高いRV車で余計にそう感じるのだが、ボスはというとそんな運転をしながらまた他の運転の荒い同僚の文句を言うのだ。いやいやいや。

 フォーラム自体はここ数年毎年開催されているが、内容は去年の方が充実していた。会場内ではフォーラムの主旨に関する新規システムパッケージの展示も行われていたが、正直なところあまり関心を引くものはなかった。一つ、観光スポット情報をデータベース化、ジオタグとも連携させておき現地のスマートフォン上でAR表示できるという製品があったが、熱心な紹介とは裏腹に「セカイカメラの二番煎じかよ…」と残念な気分になる自分だった。専用のアプリケーションのインストールが必須なところも気がかりだった。復旧環境がない観光地で、おかしなアプリをインストールして動作を不安定にする危険を強要するのもどうかと思われるのだが。
 件の教授が司会進行を務めるシンポジウムでは、質疑応答に入っても場内に溢れる関係者の誰も声を挙げず、仕方なく教授が普段の講義よろしく出席者を指名して無理やり質問を引き出そうとする一幕があった。我々はかなり前の方に陣取っていたので、教授がニヤニヤしながらこちらを見ているので冷や汗を流すはめになった。もちろんそういう状況になったのには理由があって、パネラーの一人が持ち時間を大幅に超過してまで疑問を持たれそうな詳細について全て解説し尽くしてしまったためだ。あまりの勢いに残りのパネラーの何人かが話のネタをなくしてしまうような有様である。
 フォーラムが終わり、教授にご挨拶に伺うと「やはり知った顔がいると安心だよ!さっきは誰も手を挙げないもんだから、もうちょっとで君等に質問させるところだったんだが」と恐ろしいことをおっしゃる。
 すいません事前の予習が不十分で、恐らくご期待に応えることはできなかったと思います…。
 
 フォーラムはかなり遅くまで続き、会場を出てすぐ終業時刻となった。
 どうせ戻れば、いつもの通り仕事のミスやらシステム障害やらで俺の机の上は膨大なメモ付箋、あるいは他の部門からの小言の伝言だらけに決まっている。
 今度はステアを握った俺が早く帰りましょうとボスに言うと、いやちょっと寄るところがあるとボス。言われたとおりに走っていると着いたのはマクドナルドであった。確かに今からだと帰着は20時前になるので夕食の心配はないではないが、ボスは確か糖尿病の既往歴があるはずで、こんなもん食べて大丈夫かいなと不安を抱いていると「俺が食うんじゃない、嫁とチビ共がポテト買ってこいってメールしてきたんじゃ」とのこと。
 「マックのポテトなんて一旦冷えてしまったらどう温めなおしても食えたもんじゃないですよ」と言ったが「だがそれがいい」と斬って捨てられた。ポテトLが2つ。マジか…。
 俺も一緒にチキンクリスプ2つとハンバーガー2つ、しめて400円。
 帰りの車中はポテトのオイル臭が絶えなかった。