結婚相談所。

 少し前に遡る話だが、ふと思い出したところで書いておく。
 ある日、設置端末の保守のため終業直後の窓口フロアで作業していた。
 フロア内では受付担当の女の子達が残務整理中。
 かつて同じ病院で勤務していた先輩K女史とくだらないバカ話をしながら作業を進めていると、その脇でも若手の女の子達が集まってガールズトークを始めた。
 話の中心人物は勤務2年目のDさん。フロアが異なる俺とはほとんど接点がないのであるが、以前業務システムの障害復旧で関わった際に原因としてDさんの軽微なミスを指摘したが、全く反省する気配がなくそれどころか「分かっていてやった事でそれほど問題にはしていない」と主客逆転の放言を喰らってしまい、「怒りのシナプスが備わっていないはずのGungunmeteoが本気で怒った」と未だに言われるほど怒り心頭に発した相手である。
 あまりに天然過ぎて発言に思慮が足りず誤解を招く事例が多々あったため、さすがに本人も徐々に常識を取り戻しつつあるようだ。自分も改めて話す機会があったのだが、高飛車ではなく態度が横柄なわけでもなく、若干正直過ぎるだけなようだ。
 Dさんは現在ウチの妻の部下であるが「天然ていうか絵に描いたような不思議ちゃん」と、典型的な天然で一歩間違えれば人格障害を疑うような不思議キャラである妻にそこまで言われるDさんは、本当に不思議キャラであった。
 先の職場の旅行で東京に行った際、俺がそそのかして自由行動の行き先を目黒の寄生虫博物館に決めてしまった妻に『ええ!寄生虫博物館行きたかったんですっ一緒に行っていいですよね!』と詰め寄ったらしい。しかもそこで自身のために買ったお土産は日本海裂頭条虫の全長写真が入ったクリアファイルだったそうだ。
 他の女の子達は普通にスカイツリーと銀座に行ったというのだが。
 そんなDさんが側で繰り出す言葉を聞いていて目が点になった。
 『私、こないだ結婚相談所に登録してきたの〜』
 「えー、D先輩婚活してるんですか!!」
 『そうよ、とりあえずねー相手の職業は特に指定してないけど…30歳以上で、年収は300万円以上で、理系の大学出ている人って条件でお願いしてきたの』
 「へーそうなんですかー」
 「どこの相談所ですか?」
 …確かまだ24歳のDさん、美人でスタイルもよく率直に言って結婚相談所に登録してもむしろサクラ役である。他人任せにせずとも相手から寄って来ると思うのだが。
 妻によると周囲の友人が続々と結婚しており、本人も結婚願望を公言しているというのだが。
 頼むからそういう話は男のいないところでやってくれ。というかそういう話は口外するもんじゃないのではないか。