実家の危機。

 11:00。仕事中の俺の携帯に妹から電話がかかって来た。
 「お兄ちゃん、今家大変なことになってんだけど」
 『何?何が起きたって?』
 あれか、親父が心筋梗塞で死んだか?
 「助けてよ!」
 『だから、何が起きたんだよ』
 「あのー、チビが…」
 はぁ?。
 「チビが、繋いでいたチェーンに絡まって大変なことに…」
 ………。犬がどうしたって?。
 「何とかしてよ」
 こいつアホか?。
 『お前、俺仕事中だろ。親父に言えよ』
 「親父近所の葬式行っていないもん」
 『じゃあ俺にどうしろと』
 「どうにかしてよ」
 俺の話を聞いていたのか。
 『じゃあ、ほどけよ』
 「無理。すごい絡まってるし…毛とか足とかタマタマとか。上の方もがっちり巻き付いてほどけない」
 タマタマかよ。そりゃひでぇや。
 その背後から、今まで聞いたことがない「キャキャキャキャン」というチビの悲鳴が断続的に聞こえてくる。
 というか、犬の名前が「チビ」というのをたった今知った。前の犬の名前そのままじゃないか。
 『じゃあアレだ。グリスっていうか、サラダ油。あれ、絡まったり締め付けたりしてるところに塗って、そっからほどけよ。あれなら舐めても害ないし』
 「うーん、分かった・・・やってみるわ」
 『やる前に、今のチビの状態写真に撮っとけ』
 「いやよ」
 そう言って電話は切れた。パニクったにしても程度があるだろう。
 20分ほどして妹からメールが届いた。
 「無事とれたよ(^^)」
 何なんだよ一体。