料理できる人尊敬しますよ。
自分のような自炊ができないダメ人間にとって極めて重要なのが、最寄スーパーの惣菜だ。
この田舎町にもシノギを削りあういくつかの店。その中でも規模が最も大きくてホームセンターと軒を並べる便利さに惹かれて通っているスーパーがある。
あるのだが…。
3ヶ月程前から急に惣菜コーナーが縮小されてしまった。
品揃えが半分くらいに減っただけでなく、味も「あれっ」と思うくらい変わってしまった。
痛い。我ながら情けないけど本当に痛い。
今日も帰宅時に買い物に寄ったら何にもない。元々帰宅時間は閉店間際だから、惣菜がすっかり捌けている状態は店からすると理想的なのだろうが。
考えてみたら料理って大変だ。
みんな大して苦もないような顔をして毎日料理を作ってる。
俺の隣のI君は自分のお弁当はおろか、奥さんと子供のお弁当まで作る日があるらしい。
信じられない。
何度かスーパーの中で脳内妄想をしてみたことがある。つまりは、以前どこかの店で食べたことのある料理をひとつ思い浮かべ、その材料を買い揃えて自分で作れるかどうか、そういうシミュレーションだ。
大した料理じゃない。例えばどこかで食べたミックスフライ定食が美味しかったとしよう。
ありふれた料理だミックスフライ定食。
しかしじゃあ妄想を開始してみると、まず材料として思いつくのが「フライの素材」だけ。それか付け合せのキャベツ。その他に恐らくは細かい材料が必要だろうと思うが、全く思いつかない。
そう…例えばあれだ。あの衣は何でできているのか?。しばらく考えるとパン粉と聞いた記憶がよみがえる。なるほどエビフライやヒレカツにパン粉を付けて油で揚げればフライになるのだ。
いやいや、パン粉だけエビフライやヒレカツにまぶしてもきちんと衣になるほど付着するようには思えない。それとエビフライは既にフライであって材料ではなかった。
細かい不明点は先送りにして一旦鮮魚コーナーへ行ってみよう。エビフライによく似たブラックタイガーエビが並んでいるが、困ったことに5匹セット、6匹セットばかりではないか。ミックスフライなのに5匹6匹エビフライがあったらそれはエビフライ定食だ。この余分なエビをみんなどうしているのか。そう言えば割と最近、俺に「コスモタイガーエビの方が高くて料理店で出てくるのはみんなコスモタイガーエビだ」とシラフで言った奴がいた。どうでもいいことだ。
大変な疑問に苦しみながら精肉コーナーへ進むとやはりヒレ肉も4切れセット、5切れセットのパック売しかない。この余る肉どうすればいいんだよ。
そうこうしているうちにもっと恐ろしい問題に行き当たった。揚げる時はサラダ油を使うのだろう。調味料コーナーに「揚げ物用油」などと明記された食用油がないことがそれを証明している。いや待て待て、確かかつて見たことのある揚げ物料理…てんぷら油火災の再現実験…の模様を思い出すと、かなり大きい鍋に相当量の油を入れて使っていたはずだ。店頭に並んでいる1本1リットル程度の油など一回で使い切りそうな勢いではないか。本当にそうなのか?やはりこれらとは別に「揚げ物専用油」があるのであって、この目の前のサラダ油は使ってはいけないものなのではないか?。あるいは、こんなサラダ油の全力投入などせずとも、何か別の低コストの別種の食用油を足して使うのか?。その場で思考の迷路に嵌っても答えは出ない。
何より、失敗すれば食べようのなくなった素材の後始末に追われることになるではないか。
こんな感じで毎回惣菜買うんです。
だから惣菜コーナーが縮小すると悲しいんです。
どうでしょうかもう少し惣菜コーナー頑張っていただけないでしょうか。
お願いですから。