時代の移り変わり。

 信じられない。
 LZH形式が消えていく。
 WindowsXP以降、Windows自体が標準でZIP形式をデコードできるようになってから一気にZIP形式アーカイブファイルの数が増えた印象があった。
 自分が初めてのDOS/Vマシン、IBM PS/55noteでIBM-DOSを使い始めた90年頃は、ファイルアーカイブといえばlha.exe一択だった。海外のPC-AT互換で、USモードで海外アプリを動かせるのがアドバンテージだったDOS/Vですらそうだった。もちろんzip形式ファイルも手元に転がり込んでくる事があり、そういう時だけunzip.comの出番だった。圧縮率は大抵LZHの方が高くて、何よりフリーウェアで遠慮なく使うことができた。
 Windows3.1Jに移行しても圧縮作業はFD.comから行っており、もちろん形式はLZHだったし、Windows95に移行してからもなおWinFDとUnLha32.dllの組み合わせが標準で、WindowsネイティブのアーカイブユーティリティはWinRARしかインストールしていなかった。その状況は主PCがWindows2000からXPに移行するまで変わらなかった。
 Winzipは圧縮ファイルを操作するためだけのユーティリティの癖にひどく大仰で使いにくく、しかも有償だったから乗り換えることなんか考えもしなかった。DOS/V関連ユーティリティとして、体験版を最も初期に使うことができたにも関わらず。
 インターネットが普及しても、ソフトウェアメーカーが保守やアップデートに配布するアーカイブファイルは自動実行形式がほとんどだったし、統合アーカイバプロジェクトからライブラリを落としてきてWinFDで使う限り、自分自身が圧縮形式の選択を意識することなどほとんどなかったように思う。
 今回の開発者による運用終了勧告、事実上の開発終了宣言は、ウイルスバスターNortonなど主要なウイルス対策ソフトウェアが全て海外で開発されており、日本国内でしか流通していないアーカイブ形式にまつわる脆弱性を今後フォローしない意向を示したことが直接の理由で、決してアーカイバとしてLZH形式が劣っているということではない。
 これはWindowsシリーズの中でも十分な信頼性と高速性を兼ね備えた32ビットOSの決定版と言えるWindows2000が、同じようにウイルス対策ソフトウェアからサポート対象外とされたために事実上使えなくなったのと同様の事態だ。セキュリティ対策を自身で行えないアーカイバにとって、ウイルス対策ソフトウェアから「見放される」事態がどれほど危険かを考えれば、データ交換コンテナとしての使用を控えざるを得ない。
 これからは、個人が過去のアーカイブ資産の保守のために細々と使用していくことになるのだろうか。