VANISHING VISION。

 そして幾日か過ぎた先日、ボスと私と新人T君が課長に呼び出された。
 別室にて、課長の口から飛び出したのは「T君を外部派遣する」という恐ろしい命令だった。
 さる官民合同プロジェクトにあたって、事務局へ人員を供出しなければならないとのこと。半年は行ったきりになり、期間が満了してもそのまま戻ってくる保証はないそうだ。
 もちろん某有名国立大学卒の優秀なT君の将来を考えれば、少なくとも今のようにボロいPCのリカバリに追い立てられ、紙詰まりの激しい欠陥プリンタを蹴飛ばしながら断線したLANケーブルの交換に走り回るか、さもなくばひたすらルーチンワークの伝票処理を続ける毎日よりははるかにマシのはずだ。
 しかし、この後に待っている運用統合の大事業…しかも他に2年を要するシステム改修も待っている…か始まると分かっているのだから、当然人手の手当てはあるのだろうと思ったら「異動した過去の担当者にも、現在の業務に負担をかけない程度に協力を求めて(原文ママ)」後任は置かないということだ。ちょっと待て。先輩も先任士官D君も有能な人物だが、10年以上システム運用だけをやらされて、今は全く畑違いの業務で七転八倒している彼らにさらに負担をかけるつもりなのか?
 ボスは私の業務量が既に過剰である事を課長に重ねて説明してくれたが、決定が覆るはずもない。
 ともあれ、T君は来月からいなくなり、私は今後の大仕事のために頭を抱える日々を過ごす事になりそうだ。