遭遇戦。

 本当なら違う場所か本家に書く話なんでしょうが、今回あえてこちらに。
 
 ちょっと昨夜から熱出してまして、今朝はがんばって仕事行ったんですが、やはり無理があったので2時間休みを貰って帰ったんです。ノロウイルスが職場内を一周して自分のところに戻ってきたのかもしれません。
 道すがら、栄養ドリンクなど買おうと思い薬局に立ち寄ったのです。駐車場には先に関東地方のナンバーをつけたBMWが一台停まっておりました。
 店に入って、カロリーメイトなんかをバスケットに入れて歩いていると、目の前に突然、私より少し年上に見えるとても知的な雰囲気を漂わせた男性が現れたのです。
 もちろんその男性と私は全く面識がありません。なのに私の視線はこの男性に釘付けになってしまいました。
 狭い通路をお互い邪魔にならないようによけながらすれ違った後も、私は商品を探すふりをしながらもその男性をちらちらと見やっておりました。
 何故か?
 私も「何故だろう?」と思いながらも、どうしても彼の一挙手一投足から目が離せないのです。
 何故か?
 有名人か?いや違う。いずれかの学校の先輩か?いやこんな人はいなかった。
 だが、俺はこの人を知っている気がするんだ…。
 この人が発する何かが、とても懐かしく感じられるんだ…。
 何者なんだ、このプレッシャーは…。
 
 ここまで読んで、アッーーー!な展開を想像された方、残念ながら大間違いです。
 
 熱出したままフラフラ歩き回っているわけにも行きません。戸惑いながらも、重くなったバスケットをぶら下げて私はレジへ向かおうとしました。
 ちょうどその瞬間、私から陳列棚を隔てて向こう側に、別の誰かの気配を感じたのです。
 その時熱で弱々しくなっている私の対人センサーは、プレッシャーの主があの男性ではなく…たった今棚の向こうを歩いている人物だということを発見しました。
 そう、その人物こそ、あの男性を介して私にプレッシャーをかけていた正体…。
 
 やばい。
 俺は見たくない。
 「その人」を、俺は見たくないんだ。
 
 棚の向こうの人物は、慌てるでもなく悠然と、男性の側へ歩み寄って来ます。
 私の足は凍りつき、身動きができません。
 棚の角を曲がり、男性の前に姿を現したのは…。
 
 つづく。