珍客。

 ちょうど午前0時を回ったところで帰宅した。ブリットを車庫に入れて玄関を開けた時、後ろからウチの猫…母親と同じヨモギ猫で、母親は「ヨモギ」なので区別するために「モギ」と呼ばれている…が1匹、私の帰宅を狙っていたように玄関の中へ飛び込んできた。玄関から続く廊下にはこれまたミーちゃんと呼ばれる別の猫が1匹寝転んでいて、帰ってきた自分の姉妹であるモギを出迎えに来た。
 普段なら顔を見合わせるだけですれ違うそっけない出迎えなのだが、今回は違った。ミーがモギの顔をひっきりなしにかぎまわっている。どうも様子がおかしい。ミーが何かをくわえている。
 モギが、玄関のマットの上にその何かを置いた。ミーとモギが鼻をひっ付けんばかりに眺めているそれを、上から私も覗き込んでみた。
 初めはカエルだと思った。全長3cmほどの濃いグレーのカエルだ。後ろ足も前足もカエルらしく畳んで固まっている。しかし、それにしては目が小さい。口も小さいし、よく見ると後ろ足には5本の指があってなんと鋭い爪が生えている。
 また、頭の両側には体長には不釣合いなほど大きな耳がついていて、それが小刻みに震えている。耳だけではない。胴体や手足には柔らかそうな毛が生えていて、緊張しているらしい胴体と一緒になって震えていた。耳のすぐ下、顔の両側には特に太いヒゲらしい毛も揃っている。
 これはカエルではない。生まれたばかりのコウモリの子供だった。
 2匹の猫は、そのコウモリの子供をまたパクっとくわえて部屋に駆け込んでいった。恐らく母猫か家のものに見せて狩りの成功を誉めてもらおうという魂胆だろう。慌てて追いかけコウモリを取り上げた。
 モギはさっき車庫のほうから走ってきたように見えたので、ブリットに備え付けてあるLEDライトで車庫を重点的に調べてみた。しかし見る限りではコウモリの巣らしきものは見当たらなかった。
 さて、この子どうしようか…。