「ステルス」!

 「ステルス」を観た。壮絶なB級映画だった。
 ストーリーが無茶苦茶だった。インド洋に展開する空母の艦載機が、パキスタンからロシア、アラスカ、北朝鮮までを縦横無尽に飛び回っている。しかも任務は発艦してから突然発生し、それも数十分以内にあるポイントを通過中のテロ部隊を爆撃しろとか、そもそも兵装選択はどうなっとるんだと素人目にも疑問を抱かずにはおれない内容だ。
 登場する機体もなかなか興味深い。米海軍初の艦載ステルス機が3機登場するのだが、戦闘機のはずなのに後方視界が全くない。内蔵式のウェポンベイから投下される誘導爆弾は、形状こそペイブウェイ以降のレーザー誘導爆弾だが、何を思ったかミサイルよろしく噴進式。
 途中で登場する無人空中給油システムも謎だらけだ。高高度で周回飛行する、給油用ドローグと燃料タンクを装備した大型無人飛行船なのだが、飛行船の巡航速度で一体どうやって戦闘機に給油が可能になるのだろうか?。受油機がホバリングでもしない限りは失速必至。
 そして、恐らくはキーパーソン?だろうと思われる無人ステルス戦闘機「EDI」。高度な人工知能を搭載し、有人機と編隊飛行するだけで戦闘ノウハウを蓄積でき、兵器として致命的なことにスタンドアロンで活動できる。
 この人工知能は民間企業の製作で、劇中にてEDIを制御できなくなった部隊の司令がメーカーの社長にサポート窓口にすがるパソコン初心者よろしく電話で怒鳴り込み、これもサポート要員そっくりの社長の冷静な応対に激怒するシーンがそれとなく笑える。
 結局のところ、人間側のストーリーはステルス部隊の3人の隊員のうち白人の男女が恋に落ち、残りの黒人が無人機との予期せぬ交戦で事故死。無人機の(実にありがちな)暴走で世界が危機に瀕する中、敵国に墜落した女を救出すべく無人機を手なずけて飛び立つ男…という、煮ても焼いても喰えないお話だ。
 笑える、ではなく嘲えるポイントは他にもある。女性パイロットも墜落、脱出する先が北朝鮮領内なのだが、彼女が逃走中に出くわす住民の村が、どう見ても原始人のテント村。確かに粛清され完全統制区域にでも放り込まれたらそうなるらしいが(脱北者の体験記はいくつも出版されている)、いかにアメリカ人が北朝鮮人を土人同然に見ているのかというのが伺える。それに、要所要所で使われているPCは全てVAIOだ。
 純粋な見所もないわけじゃない。発艦・着艦シーンはCG合成を感じさせないなかなかの出来栄えだし、Su-37ターミネーターの映画登場は日本公開作品としては初めてではなかろうか。但し、この作品は航空アクションではない。少なくとも空戦シーンは全く見ていられない。スピード感を出したいのか、とにかく機体のフレームイン・フレームアウトが速過ぎて眼が痛い。そもそも飛行の描写は「飛んでいる」のではなくて「浮かせている」感じで、この点は往年の名作「ファイアーフォックス」の方が100倍リアルだ。個人的にSukhoi製戦闘機のファンなのだが、追尾する-37をステルス機がクルビットでオーバーシュートさせたシーンでは思わず「そりゃー逆だろ!」とつぶやき同行者に睨まれた。
 そもそも「ステルス」という題名そのものに意味がない。
 というかこれ…マクロス・ゼロと戦闘妖精雪風のパクりで(ry

 映画館を出たら不思議な寒気がした。何か熱出そう…。