嫌気

 そういうのは非常にまずいとは理解している。
 が、今日ほど仕事に、いや今の職場に嫌気が差した日はなかったのではないだろうか。
 半年前から準備していたパッケージ導入作業が、現場の連中の「聞いてないよ」コールで阻止されかかっている。
 私は進捗を逐一、現時点で自分が所属している課の主任に報告していたつもりだった。しかしその報告はほとんど彼女らの頭に入っていなかったのだ。
 今日関連業務の打ち合わせがあって、私は別の作業のため出席できなかったのだが、他の出席者から「そのような作業をなぜ他の職員に無断で進めるのか?現場の同意を得ていないのだから中止せよ」と要求があったという。
 主任とその取り巻きも出席していてその矢面に立ったそうなのだが、結局この導入作業のメリットを全く説明できなかったという。それどころか、どうやら現場の連中と一緒になって、不在の私を吊るし上げたらしい。
 一体、何のために…土日もなく毎日5時間以上サビ残を続け、面倒な話に関わろうとしないババァ共に噛んで含めるように説明をし、大量のマニュアルを叩いては配布して準備を続けてきたこの数ヶ月の努力がほとんど無駄に終わろうとしている。
 業務の変更点が分からないならそう言えばいい。導入ペースについていけなければそう言えばいいのだ。計画書を提示してあったのにババァ共は一体何をしていたのか。
 この職場に来て5年。うすうす感じていた真実がはっきりした。
 女共に組織管理はできない。そういう能力がないのだ。スタンドアロンで働く分には問題がない。男に比較されまいとプライドを高く持っている分仕事の質は高い。ただそれを統括する能力が欠けているのだ。リーダーとしての資質を持たず、現場の部下からの意見を聞けず理解できず、不平不満をみんなで仲良くぶちまけあって解決をしようとしない、采配を振るう事を知らない、常に責任を回避し誰かの部下になりたがっている定年まじかの素晴らしい管理職たち。

 昔持ち歩いていたが最近自分の部屋の引き出しにしまっていた手書きの退職届を引っ張り出してきた。
 もしかしたら使う事になるのかもしれない。そう思ってブリーフケースに放り込んだ。
 あの噂話だけで勤務時間の大部分を潰すババァ共の顔に、そして声に、私は後どれくらい耐えていられるだろうか。