雨の休暇

 今日は一日休み。昨日月曜日に上司が私の夏休みを割り当てていたのだが、私がすっかりその事を忘れて出勤してしまったのだった。(実際には仕事も大量に発生したので出勤して正解だったのだが)
 代わりに特に作業予定のなかった今日に変更してもらったというわけ。
 といって、何かする事があるわけでもない。もうゲームも全くしなくなってしまったし(いつの間にかPS2も動かなくなっていた)元々テレビなどNHK以外は全く見ないし、それ以前に平日の明るいうちに放送しているテレビ番組など…。出かけるにしても、車で1時間以上走らないと(有料道路込みで)マトモに買い物できる場所すらない。田舎というのはつくづく嫌なところだと思う。
 天気も悪い。普段よりさらに湿度が上がり、ただ自分の部屋にいるだけでも気分が悪い。居間に降りて、子猫を構ってヒマを潰す。そう、今我が家には子猫が3匹もいる。去年の冬に我が家に現れた雌猫が、もう子猫を産むまでになってしまった。
 まだ母猫のおっぱい吸ってるのだけど、もう単独行動するようになり、あちらの部屋に駆け込んでみたり、あのタンスの裏に潜り込んで見たりと大暴れ。母猫はその面倒を見るのに疲れ、とてつもなくやせ衰えてしまっている。
 父親が持っているキヤノン純正のマクロLレンズを借りて子猫を被写体に試し撮りをする。試し撮りというほどでもなく、ただ何かがファインダーに見えるたびにレリーズボタンを押していく。子猫も馬鹿でかい大砲が自分に向くたびに、じっと砲口を凝視するのだけど、あっという間に関心を失いどこかへ飛んで行ってしまう。
 見ていると、この姉弟達の関心は 母猫のおっぱい>母猫のしっぽ>他の姉妹のしっぽ>自分の肢>ねこじゃらし…それ以降いくつも続いて、多分最後がカメラのレンズにあたるらしいことに気付く。レンズよりも強力なねこじゃらしで気を引きつつ撮ろうと試みたが、レンズが重すぎて片手でホールドできず、断念。自分の非力が恨めしい。
 午後、職場の先輩姐からTEL。業務端末でトラブルがあり、ベンダーから復旧作業をさせたいがリモートが繋がらない、原因は不明だがどうにかならないか?とのこと。
 リモートは確かにH/W故障で繋がらないが、復旧作業のスケジュール取りを含めて調査したのはベンダー側であって当然向こうは知っているはず。「繋がらない、原因は不明」とは…。
 訝しく思いながらベンダーに連絡を取り、障害の状況と推定原因について聞き出した後、私から職場に連絡して作業手順を説明する。ひどく簡単なことだったので…とはいえユーザーからすれば障害が発生した事が重要なのであって軽重の問題ではないが…業務担当の先輩に作業を行ってもらい、すぐに復旧した。
 携帯電話を置くと、一部始終を見ていた妹がニヤニヤと笑っている。普段の私と、電話口の私がまるで別人だと言うではないか。
 確かに自分でもそう思う。家にいて必要以上のことを口にせず、静かに過ごしている私と、職場で周囲に気を遣い、ありもしない愛想を数で圧倒する女性職員たちに振りまく私。
 気難しい人がいればご機嫌を取り、自分が関心のない話題で盛り上がっていれば素人に成り切り教えを請う振りをして紛れ込み、同僚の噂話を嘲いながら何度も流す先輩に初めて聞いた顔をして相槌を打ち…。
 どれが本当の自分だろうか。今、こうしてエディタにテキストを叩いている気分の自分がホンモノではないか。気分の抑揚がない、平坦な自分。
 普段からこうしていられるのであれば、きっともっと生き易いのに。