さらば、IS11T。

 遂にIS11Tとの別れの日がやってくる。
 
 ハードウェアキーボード付きのスマートフォンを使い続けて早8年の歳月が流れた。
 俺にとって最初のスマートフォン東芝製IS02。
 スライド式フルキーボード装備で、その後の(俺にとっての)スマートフォンのあるべき姿を決定づけた金字塔的端末だったが、auにとって実質最初のスマートフォンであり完成度の低さが目に余り、何よりアプリケーションの選択肢がほとんどないWindowsMobile6.5だった点が致命傷で、従来のガラケーであるW52Tとの併用も虚しくわずか1年程で運用を終了した。
 そしてその後継機種がIS11T。3G周波数帯の整理により使用できなくなるW52Tの代替機が必要になり、また電話としてもWEB端末としても中途半端だったIS02を捨ててXPERIAにでも乗り換えようと捨て鉢になっていた俺が2013年にauショップの片隅に旧モデル扱いで打ち捨てられていたものを偶然発見して衝動買いした端末であった。
 その時点で処理速度もストレージ容量も不足気味だったが、スマホのようなハードウェアの制約が過酷な機器で流行りのゲームやアプリなど使うことはない、どうせ俺にとってモバイルの中核はノートPCなのだから、せいぜい2〜3年も使えれば十分だと割り切って購入したつもりだった。
 ところが…Android2.3、本体ストレージ容量がわずか512MB(カタログ値、しかも初回起動時で既に残り120MB)、LINEとEvernoteをインストールしたら30MBも残らないという絶望的な動作環境である。Root化してアプリを可能な限りSDカードへ移動する等考えられる対応は全てやってみたが根本的には解決できず、俺はすぐ音を上げる羽目になった。
 
 そして、せいぜい2〜3年我慢するつもりがその間に日本の携帯端末事情が坂道を転げ落ちるように悪化し東芝スマートフォン事業から撤退。他のメーカーから同じ路線の端末がわずかに発売されたものの性能的に中途半端で購入する気になれず、結局俺は5年も待つことになった。
 トドメを刺したのはLINEがVer6を最後にAndroid2.3のサポートを打ち切って、何とインストール済みの環境でも起動できないようにしてしまった事件だった。
 この頃には職場でも家族・友人とも連絡はLINEでのやり取りが多くなっていた。知っての通りLINEは開発から運用に至るまで韓国の諜報部門が関わっておりセキュリティポリシーなんぞ存在しない暗黒サービスだが、周りが使っている以上合わせないと文字通り話にならない。俺宛の連絡だけ別扱いになり、LINEグループは閲覧できず、しかもこちらからの連絡は(もうメールアドレスの交換などしなくなっていたので)Cメール・SMSを使うことになるが、相手はそんなもの普段使わないため届いても気付いてくれない。
 その間、IS11T自体も時々電話アプリが誤作動して電話を発信しようとする相手とは別の相手先にダイヤルされてしまう、容量不足でインストールアプリのアップデートができないためその他のオンラインサービスも使えない等、おおよそ電話ともIT端末とも言い難い状況が続いたのだ。
 
 もちろん事態を打開すべく様々な手を打っていた。一つが希少なハードウェアキーボード内蔵端末メーカーの新たな開拓であり、NEC Terrainの個人輸入やBlackBerryClassicの入手により端末移行の可能性を探ってみた。残念ながらどちらも縦型スレートでキーピッチが狭すぎの上、その当時の端末としてもストレージ容量が少な過ぎるという大問題があり、運用移行は断念することとなった。
 次に行ったのはハードウェアキーボードからの脱却の試みであり、実質的に日本国内のスマートフォンのほぼ全てがタッチパネル上のフリック入力で操作されているという現実から単純に俺もそれに合わせればいいじゃないかという分かりきった話だったのだが、サービスエリア等が有利なDocomoへの乗り換え準備として導入したiPhone6の上ですらフリック入力や仮想キーボード入力に耐えられず、IS11Tのキーボードスタイルと酷似した社外品のBluetoothキーボードを筐体カバー越しに貼り付けて使うという無茶をせざるを得なくなった。しかもiPhoneでは本体横置きで使用できるアプリが少なくハードウェアキーボードによる長時間・大量の文字入力は困難であった。
 このキーボードレスの方向性は俺が納得できないだけで世の中の趨勢であり、その後もWindowsPhone10動作機である8,000円叩き売り端末NuAns NEOの導入により性懲りもなく繰り返すことになる。
 こうして手元に集まってきた多数のスマートフォンであるが、これらの端末はオンラインサービスを利用する上ではIS11Tよりは圧倒的に高速だったので、自然とIS11Tはガラケー同様に電話とキャリアメールのみ、その他はスマホとしてのこれら予備機を併用する形に落ち着いた。特に最近はIS11TとiPhone6を持ち歩き、場合によってモバイルルータとしてNuAns NEOを追加するスタイルである。正直言って面倒くさい。アーキテクチャ一つ見てもIS11TはAndroidiPhone6は言わずとしれたiOS、そしてNuAns NEOはWindowsPhone10(しかも購入後1ヶ月でMicrosoftは開発終了発表)。充電用端子はMicroUSB、Lightning、USB Type-Cとバラバラである。何一つ共有できる運用環境がない。
 
 2ヶ月前。結局、ハードウェアキーボード端末をリリースし続けているのはBlackBerryのみという状況にあって、もはや他に選択肢はないと諦めてよりスペックが高い新機種が発表された時点で端末を一本化することにした。
 BlackBerryにしても、極端にキー種を切り詰められ制限が多い配列を伝統としており、特にカーソルキーがないこと、英語圏で販売されている機種であるため文字種切り替えキーがない、文字入力後の変換動作に癖がある等、長時間の入力に支障をきたしそうな点は多い。最大の問題は、海外製端末のほとんどと同じくauには対応しなかった点だ。
 まぁ、これらの点はTerrainと同じである。
 
 BlackBerry公式サイトをチェックするようになって間もなく、BlackBerry KEY2のリリースが発表された。喜ばしいことに、従来機種BlackBerry KEY1と異なりauにも対応している。
 これは買いだ。買うしかない。これ以上我慢を重ねていても、いいことは一つもない。
 直ちに公式サイトで予約。

 そして9/7、発売日と同時に手元にKEY2がやってきた…。