マスター達。
また病欠して検査を受けた。
恐ろしく高額な治療が功を奏したか懸案だった病変は大きく軽快していたが、一方で別の部位に小さいが新しい病変が見つかった。
まだしばらく通院治療が続きそうだ。
N氏から車での旅行を打診されていたがこの検査があったので断っていた。2年前の大阪行き以来ご無沙汰なので、随分付き合いが悪くなったとN氏は思っているだろう。申し訳ない。申し訳ないついでに月曜日は小松基地航空祭に行くと前から決めていたのでどのみち同行できないか、行き先に大幅な制約を付けていたに違いない。
麻酔下での検査だったため車を運転しての帰宅ならしばらく休めと指示されて検査病棟レストルーム内のリクライニングシートに座ったはいいが、しばらくどころか眠り込んでしまい再び目が覚めると外は陽が落ちかけていた。
病院を出て、近くの港湾公園へブリットを走らせた。平日の夕方であるのに広い駐車場は満杯に近い。キャンピングカーが何台か天幕を広げて夜明かしの準備を始めていた。
ブリットを降りて岸壁を歩く。
最近I君達の話に合わせようと年甲斐もなくポケモンGOを始めたところで、サブ機のiPhone6上で起動すると公園内に5ヶ所もポケストップが見える。モンスターボールを使い切ってから放置状態だったので早速補給しに向かうと、この夕闇迫る公園内を歩く人影のほとんど全てがスマホを片手に歩くポケモンマスターであることに気がつく。
皆、この公園を思い思いの方向に歩き回っている…と思いきや、どうも一定の法則があるように見える。しばらくiPhoneを見つめながら歩いた俺にもその法則が適用され始めた。つまり園内のオブジェの配置、つまり点在するポケストップを一筆書きに追うようにして歩いているのだ。
この公園の素晴らしいところは、これらのポケストップを一巡する頃には最初に立ち寄ったポケストップが再度フリックできるようになっている絶妙な距離感であろう。
仕事帰りと思しき薄汚れた作業服姿の初老の男性、目が覚めるような美人のOLさん、制服姿の女子高生達、見るからにゲーマー風の若者、着るべき年代を10年ほども間違えたかのような若い服装をした中年男性など、世の中一般ではあまり接点がなさそうな人々がこうしてポケモン探しに興じている様子は流行というものを実感させてくれる。
そういう俺自身もその流行に乗っている。惜しむらくはこの流行がもう遅れかけらしい点であるが…。
しばらく港内の穏やかな波を眺めつつ園内を歩いているうちに、今まで100mとカウントアップが進まなかったポケモンの卵の孵卵器が所定の距離の移動を検出した。
5km…んん?5kmだって?。
いつの間にこんなに歩いたのだろう。時計を見ると18時、周りはもう暗く街灯が灯り始めている。モンスターボールも大量に溜まり、ポケモンもシードラやベトベターなどよく分からないのが何体かコレクションに入っていた。
しかしこのポケモン達、集めるのはいいが一体何に使えばいいのだろうか?。